今、がん治療に革新をおこすと注目されている薬があります。それは、免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ」です。
ニボルマブは、小野薬品工業が開発した薬で「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」と世界中で注目されています。
免疫療法とは、自分の体の免疫力を高めてガンを攻撃する方法です。患者の血液からリンパ球に含まれるがん細胞を傷害するナチュラルキラー細胞(NK細胞)を増殖して体内に戻す方法などがあります。
小野薬品工業が開発した「ニボルマブ」は、これとは全く違う方法で免疫力を使ってガンを攻撃します。
がんは、体内の免疫から攻撃されないように、免疫機能を抑制するPD―1抗体とよばれる特殊な能力のある分子を備えています。
その抗体があるため、体内の免疫機能がガンに対して働かなくなり、ガンは攻撃されることなくどんどん増殖することができるのです。
ニボルマブは、ガンのPD―1抗体を効かなくして、その能力を取り去ってしまう効果があります。そのため、ガンは身体中のリンパから、一斉に総攻撃を受けることになります。
このような作用から、ニボルマブは「免疫チェックポイント阻害薬(そがいやく)」と呼ばれています。
5年後の生存率が1割前後という悪性のメラノーマ(悪性黒色腫)に「ニボルマブ」を投与したところ、がんの増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出たそうです。
10月27日 NHKクローズアップ現代「免疫チェックポイント阻害剤でがん治療が激変する!新免疫療法」は、こちらで紹介しています。
この事実は、世界中の医療機関に衝撃をあたえ、世界中の大手製薬会社が一斉に研究を始めました。現在、ニボルマブは、肺がんや胃がん、食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいるそうです。
ニボルマブは、がん治療に高い効果を上げる新薬として日本でも承認され、2014年9月小野薬品工業から発売が開始されました。
人間とがんとの最後の闘いは終結まで、あと少しのところまできています。今がんと闘っている人のためにも、この新薬の効果に期待したいですね。
免疫チェックポイント阻害剤は、NHK「サイエンスZERO」でも、詳しく紹介されました。以下、番組で紹介されていた内容をまとめました。
サイエンスZEROで紹介された内容
米国の研究では、ニボルマブは、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎臓がんで、これまでにない治療効果をあげているそうです。
通常の抗がん剤は、がん細胞を直接攻撃するので、がん細胞が変異をおこすと耐性をもつようになります。しかし、免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が変異を起こしても長期間にわたり実力を発揮することができます。
現在日本では、根治切除不能の悪性黒色腫(メラノーマ)について薬事承認がおりており、他のガンに対しては臨床の段階だそうです。
副作用については、抗癌剤と違い吐き気や抜け毛などの強い副作用はでません。しかし、免疫のブレーキを抑えてしまうため、間質性肺炎や甲状腺の異常、腸炎などの自己免疫疾患系が副作用としてでることがあるそうです。
免疫チェックポイント阻害剤の残された課題
課題1 この薬が効く患者をどうやって見つけるか
免疫チェックポイント阻害剤は全員に効果があるわけではなく、現在のところ3割の人に効果があるそうです。その差は、がん細胞側の出すPD-L1という発現が関係していると言われています。
課題2 より多くの患者が利用するには
米国では、免疫チェックポイント阻害剤に加え、抗がん剤や放射線治療を組み合わせて多くの人に治療効果を高める試みがされています。日本では、免疫の機能アップさせる薬との組み合わせの治療法を研究中だそうです。
免疫チェックポイント阻害剤による治療は、今後様々ながんの治療で使われることが期待されています。患者さんは、科学的に有効性が確認された治療法を選んで受けてくださいとのアドバイスがありました。