がん細胞という最小の単位をピンポイントで叩き、ガンをやっつける夢の医療臨床が行われています。その最新治療とは、「ホウ素中性子捕捉(ほそく)療法(BNCT)」といいう方法です。

研究をしているのは、大阪医科大学 がんセンター 脳外科医宮武伸一先生です。ホウ素中性子捕捉療法の治療を受けるため、宮武先生のもとに、末期の脳腫瘍の患者さんが全国から訪ねています。

がんの中でも再発した末期の脳腫瘍は、特にやっかいだといいます。正常な細胞の中に、がん細胞が入りこんでしまうため、手術して切除することもできず、非常に難しい状態になってしまいます。

そんな末期の脳腫瘍で悩む患者に対して、宮武先生は、「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」で挑みます。この治療法は、悪性脳腫瘍の最後の砦であり、また最新で夢の治療法であると言われています。

ホウ素薬剤を点滴で体内に入れると、がん細胞に集中して取り込まれる性質があります。そこに原子炉から発生させた中性子を照射すると、中性子はホウ素にあたると細胞1個分の規模で核分裂します。

つまり、ホウ素が取り込まれたガン細胞のみを攻撃し、正常細胞はなったく傷つけないという夢のような治療ができるのです。

このBNCTは現在、以下の医療機関で研究されています。

BNCT研究医療機関
・総合南東北病院
・国立がん研究センター
・京都大学原子炉実験所
・大阪府立大学
・徳島大学
・つくば大学
・大阪大学
・大阪医科大学
・川崎医科大学

この治療法で、治療患者全体で約2倍、悪性度の高い患者の場合は約3倍の平均生存期間(余命)の延長が確認されているそうです。

現在、課題とされているのが、照射後の脳の腫れが起こることです。その脳の腫れを抑えるには、「血管新生阻害剤」という薬が有効ですが、その薬は3ヶ月で100万円の自己負担が必要となってしまうそうです。

脳腫瘍を5年前に発病した57歳の男性は、手術と放射線により治療を行ってきました。しかし、腫瘍が大きくなり、手のしびれ、言語障害がでてきてしまい、先生のもとを訪ねてきました。

この治療を受けるためには、余命を調べ本人に伝える必要があります。調べた結果は、男性の余命は、3.7ヶ月でした。

家族の励ましを受け男性は「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」を開始します。その結果、3ヶ月後には腫瘍は確実に小さくなっていました。

そして1年後、男性は仕事の現場に立つことができるまでに回復してました。

宮武先生は、「患者さんからの直接の喜びの声を聞くと本当にうれしい」といいます。そして「一人でも多くの患者さんに希望を与えたい」「時間を提供したい、夢を提供したい」と、さらなる研究に挑み続けています。