かつてのガンとの闘いと同じポジションにある認知症。認知症は、まだ決定的な治療法が確立されておらず、人間の「宿命の病」とされてきました。

しかし、かつてガンがそうであったように、認知症にも治療の光が見えてきたそうです。

認知症治療には、いろいろな新薬が開発されてきました。しかし、まだ決定的な治療薬はでてきていません。

ところが、認知症の患者に既存薬の薬を投与したところ、記憶力の低下に著しい効果があるという報告が相次いているそうです。

その既存の薬とは、高血圧や糖尿病の薬だそうです。

既存薬であれば、安全性は確保されているので治療のための投薬も早そうです。

さらに「脳の残存機能に働きかける介護法」で認知の症状を改善できることもわかってきました。

その介護法とは、「ユマニチュード」といわれる、新しいケア方法です。

ユマニチュードとは、フランス人のイヴ・ジネストさんが開発した、高齢者とのコミュニケーション手法です。

その手法とは「見る・話す・触れる」の3つの基本の接し方で患者に向き合うと、認知症状が改善することが知られています。

ユマニチュードは、現在、ドイツやカナダなどでも積極的に取り入れられており、日本でも実践するための準備が進められています。

世界の先進国は高齢化が進み、このままでは、認知症患者が爆発的に増えると予測されています。

人間宿命の病「認知症」その治療の最前線を「NHKスペシャル」で紹介しました。

既存の薬で認知症治療

アルツハイマーは、25年かかり発症すると言われています。

発症5年前からは、軽度のモノ忘れがありこの段階で進行を遅らせられれば、患者数を大幅に減らすことができます。

予備軍から発症を食い止める

アルツハイマーの進行が遅い人に、共通点があることがわかってきました。

初期のアルツハイマーが発症し、5年たっても進行が進まない人たちを調べてみたところ、脳梗塞の薬を飲んでいたそうです。

脳梗塞の薬とは「シロスタゾール」。血栓ができないように血液がサラサラする薬で、広く処方されている薬です。

シロスタゾールを飲んでいる人を調べてみると、認知症の進行がなんと80%も抑制されていることが解りました。

シロスタゾールは、脳の血管を刺激することで、脳に溜まっていたアミロイドβを減少させていたようです。

米国では糖尿病のインスリンを使う治験が

認知症は、脳の糖尿病とも言われています。そこで、鼻から脳に直接インスリンを送り込んでみたところ、認知症の進行が食い止められました。

アルツハイマーの新薬はこれまで100種類作られていますが、あまり効果がありませんでした。

しかし、既存薬であれば、危険性もわかっているため数年で利用できるようになります。

東京オリンピック2020年頃にも、治療開始が期待できるそうです。(※シロスタゾール、インスリンは現在は認知症の治療薬として使えません。)

認知症の人とコミュニケーション ユマニチュード

今、注目されている認知症の治療法に「ユマニチュード」があります。開発し体形化したのは、フランス人、イヴ・ジネストさんです。

ユマニチュードは、人とのコミュニケーション方法で「見つめる・話しかける・触れる・寝たきりにしない」が基本です。

見つめる・・正面から見つめる
触れる・・掴むのではなく支える
話しかける・・実況中継のように話しかける
寝たきりにしない・・立ち上がらせて寝たきりにしない

実は、認知症になると人の顔を忘れてしまいますが、感情を認知する力が十分に残っているそうです。

そこで、笑顔で見つめ振れて話しかけることで、残された認知能力を刺激し高めることができるそうです。

ユマニチュードをすることにより、顔の表情や、話し方、皮膚の接触などの感覚を利用し心に届くケアをすることができます。

ユマニチュードを家庭で実践するためには

①びっくりさせないこと。必ず、前から笑顔で目を合わせてから声をかけること。

②車いすを押すときは(姿が見えないとき)、片手を肩の上に重みを感じさせる程度の圧力をかけ安心させます。

③笑顔は、不自然と思うくらい最高の笑顔で、顔を近づけて話します。

この方法を、自宅で治療している患者さんの奥さんに実践してもらったところ、認知機能に劇的な改善効果が見られたそうです。

触ることで徘徊や暴力を抑える

徘徊や、攻撃的な行動は、ストレスホルモンが過剰に放出され行動心理症状が起こることがわかってきました。

ストレスホルモンを減らす役目は海馬ですが、認知症患者は海馬が弱っているため、ストレスホルモンを抑制できなくなり、行動心理行動がでてしまいます。

しかし、海馬が萎縮している人でも、ストレスホルモンを抑えることができる方法があります。それは「触れる」こと。

触れることで、やすらぎの気持ちが起き、海馬の変わりにストレスホルモンを抑制するのだそうです。

実際、徘徊や攻撃的な行動を示す患者さんに取り入れたところやさしく触れるケアを始めてから、徘徊や攻撃的な行動が少なくなったそうです。

週5回、優しく触れるケアを6週間実施したところ、攻撃性の低下が71%という劇的な改善効果がみられました。

認知症の予防

65歳の4人に1人、800万人の予備軍がいるそうです。発症を5年遅らせることで、認知症患者を減らすことができます。

実は、アルツハイマー病は、生活習慣病と大きく関係していることがわかってきました

アルツハイマー病の発症率は、糖尿病の人は2倍、喫煙している人は3倍、リスクが高まるそうです。

逆に、運動習慣がある人はリスクが下がります。

イギリスでは、脳卒中と心臓病を減らす活動を行い患者を40%減らしたところ、認知症の発症も23%減少したそうです。

日本では、予防は市町村の仕事、医療は医学の仕事と別れれています。イギリスでは、それを医療に一本化することで、効果を上げたのだそうです。

発症リスクは、生活習慣を改善し、運動をすれば下げられることがわかってきました。

また、現在、認知症に悩んでいる方も、既存薬の治療効果の話しはこころ強いですよね。効果がある薬なら一日でも早く、発売して欲しいですね。