今年の冬は暖冬だと思っていたら、急激に寒くなりましたよね。寒くなってくると増えてくるのが、筋梗塞や脳梗塞。注意が必要なのが、冬の入浴です。
入浴中に筋梗塞や脳梗塞で亡くなる人は年間1万人以上、なんと、交通事故の死亡者数の倍もいるそうです。入浴中の事故は、ヒートショックと呼ばれ、急激な温度差により血圧が大きく変動するためにおこります。
温かい部屋から寒い脱衣所へ移動し、裸になって寒い浴室で急に暖かいお湯につかる、血管が収縮拡張を繰り返し血圧が激しく上下してしまいます。
予防するには脱衣所に暖房機を用意して15度以上に温めておくこと。また、浴室は、入る2、3分前にシャワーを流しておき、浴室の温度を高めておくと良いそうです。
もったいない気持ちがありますが、脱衣所の暖房と、浴室をシャワーで温めてから入ることは絶対お勧めです。私は、12月から3月までは、必ずそうしてますが、入浴がとても快適ですよ。
風呂のあと2度倒れ救急車に
NHK1/28日放送「ドクターG」で紹介た患者さんは、孫の世話に追われる60代の女性です。
共働きの娘夫婦と二世帯住居で生活しているため、孫の世話はもっぱらおばあちゃん任せ。しかし、孫をお風呂に入れた後、二度気を失い倒れてしまいました。
すぐに救急車を手配し病院に運びましたが、到着したころにはすっかり元気になってしまいました。単純にのぼせただけなら良いのですが、どうやら思いがけない病気が潜んでいるようです。
ヒントは「謎のスポイト」。スポイトとは、いったい何を意味するのでしょうか。ドクターGは、東京城東病院 志水太郎先生。研修医たちを、原因究明へと導きます。
患者さんの様子
風呂に30分ほど入り、その後孫に寝床で絵本を読んで上げて、電気を消そうと思って立ち上がった倒れた。
2週間前にも倒れた。その時は風呂あがりで、ドライヤーで髪を乾かしている時にふらふらして倒れた。
ろれつも回ってなくて、心配になって救急車で病院に運んだ。ろれつはすぐに治った。
1ヶ月前に孫とダンスをしていたときに、気が遠くなるようなめまいを感じた。
25日前、夫と社交ダンスで踊っているときに、めまいがおきた。
去年の健康診断で、血圧が高めで糖尿の気があるので、気をつけるように言われていた。
●昨年の健康診断の結果
・血圧 150/93
・血糖値 130mg/dl
・LDLコレステロール 150mg/d
●来院時のバイタルサイン
・62歳女性 主婦
・160cm 70kg
・体温 36.9度
・血圧 155/90
・心拍数 85回
・呼吸数 18回
頭部CT 異常なし
心電図 正常
救急車で運びこまれた時に、意識もしっかりしていた。
●問診からの情報
体に痛み・・・ない
まひのような症状・・・ない。
過去に心臓や血管の病気は・・・若い頃不整脈
血圧の薬・・・血圧を下げる薬を朝飲んだ
最後の食事・・来院当日の19時に海鮮鍋をしっかり食べた
首の触診・・多少血管が硬い
ファーストカンファレンス
椎骨脳低動脈解離
脳へ血液を送る後ろ側の血管の内側が裂け、脳に血流が流れなくなる。頭に痛みを感じ、めまいや意識を失うなどの症状がでる。
合致点・・高血圧、ろれつがまわらない、めまい
合わない点・・痛みがない
大動脈炎症候群(高安病)
大動脈や頸動脈などの全身の大きな血管に炎症が起こる病気。35歳までの若い女性に多く発症する。発熱、だるさ、めまいなどの症状が現れる。
合致点・・高血圧、発熱(微熱)
合わない点・・若い女性の病気
一過性脳虚血発作
脳へ送る血管に一時的に血栓などがつまり、麻痺や感覚障害などが現れる。詰まったままだと脳梗塞が起こるが、溶けて流れると一過性の症状で終わる。
合致点・・糖尿病、高血圧、脂質異常症
合わない点・・麻痺がでても意識がなくならない
最終診断
鎖骨下動脈盗血症候群
大動脈から分岐して鎖骨に繋がる動脈に狭窄がおき血が流れにくくなる病気。右側より血管構造の複雑な左側におこりやすい。
狭窄がある側の手を激しく動かすと、左の脳へ行く血液が腕の方へ引きこまれていくため、脳へ血流が流れず失神することがある。
確認のため、左右の血圧を測ったところ、左側の血圧が低くなっていた。
・右血圧 156/92
・左血圧 131/72
患者は、鎖骨下動脈の狭窄を治す手術を受け、症状が改善した。
ドクターGからのアドバイス 病歴を映像化する
本番の医療現場では映像がありません。いったいこの患者さんがどういう状態で、気を失ったのかを映像化するのが、問診の肝だと思います。
問診をしながら患者さんの生活空間をリアルに描き出し、ささいな手掛りも見逃さないで診察することが大切です。