神の手をもつ脳神経外科医として世界中で知られる、福島孝徳医師。

福島式鍵穴手術という独自の手術法を生み出し、超困難とされる様々な脳外科手術に挑み世界中の患者の命を救ってきました。

福島先生の「福島式鍵穴手術」は、従来10cm以上の開頭が必要だった脳外科手術において、開頭部を1cmと小さな範囲にすることで患者様の身体的な負担とリスクをおさえる術式です。

脳の構造

そのため開頭する場所が適切であること、小さな開口部からあらゆる処置ができることなど、超高度なテクニックが要求されます。

福島先生は、これまで24000例の脳神経外科手術を行い、そのうち脳神経外科頭蓋底手術は16,000例以上と、世界レコードをもっています。

症例数だけでなく、福島先生は超難関、手術不可能と言われる領域のものまで行っており、驚異的な治癒率を収めているのです。

そんな中、福島先生が最後の望みと、12歳の少年への手術の依頼がありました。

少年の病名は、松果体奇形腫。脳の奥深くにある小さな松果体という器官に腫瘍でき、どんどん大きくなってしまう病気で、脳外科の中でも特に手術が難しいとされる病気です。

松果体は、睡眠や抗酸化、免疫機能などの調整するメラトニンというホルモンが分泌する働きがあります。

松果体が大脳の最も深い位置にあること、間脳や脳幹に近いこと、また脳の動静脈に囲まれており、ちょっと前までは手術不可能とされていた領域です。

少年は、これまでに5回の手術と放射線治療を行い一時は小さくなってましたが、再発し腫瘍が大きくなって、今では盲目寸前の状態となってしまいました。

このままでは少年は失明してしまいます。治すには、巨大になった腫瘍を取り除くしかありません。

福島医師は、少年の回復を約束し、松果体巨大奇形腫手術に挑みます。

手術は無事に終了、少年の視力は回復し、現在は元気に学校に通っているそうです。

この手術の一部始終は、TBS「スーパードクターズ」で紹介されました。

「余命宣告の胆道がん患者を救うスパードクター 消化器外科医・梛野正人医師」はこちらで紹介しています。

脳の中に髪の毛や骨が入っている巨大奇形腫

福島先生の本拠地は、アメリカノースカロライナ州にあるデューク大学です。先生の元には、世界中から難しい手術の依頼が舞い込んできます。

今回は日本に滞在する34日間で、なんと12病院で67件の手術を行う計画だそうです。

北九州で先生が手術を行うのは、中学1年生の12歳少年です。彼の脳の中には、奇形腫と呼ばれる腫瘍がありました。

奇形腫とは、脳の中に体の部品となる細胞が取り込まれてしまうという非常に珍しい病気です。

体の部品とは、皮膚の成分、髪の毛、骨、歯、爪、内蔵などで、それが脳の中で成長しどんどん大きくなってしまうのです。

このような奇形腫は、脳腫瘍の中でもめったにない症例で、脳腫瘍1000人のうち1件ほどの確率だそうです。

そのため、大学病院でも5年か10年に1人しか患者がでず、手術例もほとんどない状態です。

手術の一番のキーポイントは脳腫瘍の周りにある5本の静脈です。静脈の1本でもおかしくなると、命とりになってしまいます。

さらに今回のケースでは、両側の視床、視床下部、視床下、中脳の中に、腫瘍がめり込むように成長しているため、非常に難しい状態になっていました。

少年は、1年前のマラソン大会でまっすぐに走れなくなり、精密検査を行った結果巨大奇形腫と診断されたそうです。

福島先生は、脳や血管を傷つけないよう避けながら慎重に進み、ようやく奇形腫にたどりつきました。

腫瘍の中には、大量の毛が入っていました。さらに粘液と油の溜まった腫瘍などいろいろな種類の腫瘍が見つかりました。

「全部取り去れば少年の新たな人生が始まる」、先生はその一心で、5cm大まで成長していたすべての腫瘍を取り去りました。

奇形腫の手術を終えて2ヶ月後、少年は元気に学校に行けるようになりました。自転車にも乗れるようになり、知能面も運動面でも驚くほどの回復をしているそうです。

「先生は、一人でも多くの患者の命を助けるため、一瞬の時間も無駄しない」と決心し、休みはとらないことにしているそうです。

この手術が終わり休む間もなく、福島先生は次の患者の待つ鹿児島へ新幹線で向かい、その日の夜に別の患者の手術を行いました。

福島先生は、現在73歳。体と腕が動く限り、世界中の現場に出向き手術を行うそうです。

体力、気力、知力、技術、すべてが天才級の福島先生でした。すごい先生ですね・・。