40歳をすぎる頃から、身体中のあちこちが故障してきますよね~。その故障を、ちょいちょい治しながら生活しています。
年式の古い車を修理しながら、愛情をもって末永く乗っていこうという気持ちと、よく似ているような気がします。
でも、次から次と修理が必要な箇所がでてきてしまい、最近ちょっと焦っています。^^;
今回、NHK「ドクターG」で紹介された患者さんも、そんなケースでした。
患者さんは、52歳の不動産業の男性経営者。釣りと料理が大好きで、元気な毎日を過ごしていましたが、ある日階段から転落してしまいます。
腰や首を強打し救急車で病院へ運ばれました。脳や脊椎などにも問題がなく、すぐに退院となりました。
しかし、その日から手にしびれや痛みがでるようになり、いろいろな検査を受けましたが、いずれも異常なしで原因が見つかりません。
そして、3ヶ月後たどりついたのが、ドクターGこと、地域医療機能推進機構の徳田安春先生です。
徳田先生は、以前は水戸協同病院の総合診療医の名医として、全国にその名を知られていました。
現在は、地域医療機能推進機構本部の本部顧問の傍ら、JCHO東京城東病院の顧問を勤めています。
徳田先生が問診していくと、しびれの原因となるものが見つかりまりました。
検査しても何も見つからなかった患者に、徳田先生は、どのようにアプローチし隠れた病気を見つけたのでしょか。
病気特定の鍵のなったのは、ドライアイスのようです。総合診療医の凄さを実感するケースです。
患者の症状
55歳男性不動産経営、3ヶ月前に自宅の階段で転んで、救急車で運ばれてきました。
階段で打ったのか、首と背中、お腹に痛みを訴えていました。
運ばれてきた時のバイタルサインは・・
・体温 36.8℃
・血圧 103/65
・心拍数 52回/分
・呼吸数 15回/分
早速、検査を実施しましたが、どれも異常なしでした。
・バレー徴候:異常なし、
・脳:CT異常なし
・胸部の造影CT:異常なし
・頚椎MRI:異常なし
・血液検査:異常なし
・心臓エコー:異常なし
異常がなく落ち着いてきたので、その日のうちに自力で帰りました。
2日後に来院し、手のしびれを訴えました。
両手にジンジンするようなしびれがあり、ものに触ったときに静電気に触れたような痛みがするとの事です。
患者は、半年前から抗コレステロール薬(アトルバスタチン)を服用しています。
薬の影響を考え、薬の種類を変えてもらうことを提案し変えてもらったそうですが、2ヶ月後になっても症状が改善されず、再来院しています。
考えられる病名
考えられる病名として、以下のよな病気がピックアップされました。
・骨髄ショック後の全身性疼痛障害
・慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)
・ギラン・バレー症候群
しかし、いずれも患者の症状との矛盾点がでてきます。
詳しく聞いてみると、患者の痛みは冷たいものを触ったときに起こっていることがわかりました。
考えられる病名
冷たいものを触ったときに「痛み」が起こる症状を、「ドライアイスセンセーション」といいます。
患者は、神経に障害がおき「冷たさを痛みと感じる温度」が、低音(0℃以下)から高いほう(常温)に移動してしまい、水や金属に触れた時に、しびれや痛みとして感じるようになってしまっていたのです。
原因は、なんと釣好きの患者が釣ってきた「50cm級のイシガキダイ」にありました。
前日、患者の結婚30周年の祝があり、友人に自慢のイシガキダイを料理し味噌汁にして振る舞ったそうです。
けっこう残ってしまったため、夜の8時頃一人で残りを平らげてしまいました。その後10時頃に階段から落ちました。
転倒の原因は黒鯛の食中毒による失神
患者は、大型のイシガキダイを大量に食べたために「シガテラ中毒」にかかり、神経障害が起こりドライアイスセンセーションを起こし、しびれを発症していたためでした。
「シガテラ中毒」は、4kg以上のサイズの400種類の魚の体内に蓄積された、「シガトキシン」を食べることにより引き起こされます。
「シガトキシン」は、亜熱帯に生息する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)という海藻に含まれており、それを食べる魚の体内に蓄積されます。
小型の魚なら蓄積量が少量なので問題がないのですが、大型の魚には長年の間に「シガトキシン」が大量に蓄積するため、食べると食中毒を起こしてしまうそうです。
●しびれ発症のストーリー
食中毒→毒素が心臓へ→徐脈→失神→転倒→毒素が全身の神経へ→しびれ(ドライアイスセンセーション)となります。
この「シガテラ中毒」は、知っている医者も少ないため、原因不明の病気MUSと診断されてしまっている患者も多くいると推測されるそうです。
シガテラ中毒による神経症状は、徐々に回復していくそうです。