「再生医療」という言葉を聞かない日はないほど、私たちにとって身近な言葉になりましたよね。
再生治療とは、病気や怪我で失った体の機能を、自分の細胞を使って取り戻す治療法をいいます。
生物には、もともと自分自身を修復する機能をもっています。私たちが、切り傷ややけどなどを負っても自然に治るのは、この修復機能のおかげなのです。
受精したばかりの細胞は、細胞分裂を繰り返して、体のすべての部分を創りだしていきます。しかし、それができるのは、細胞分裂の段階だけで、出産してからは、皮膚などの一部しか再生することができません。
ところが、ノーベル賞を受賞した京都大学中山先生は、成熟した細胞から何にでも変化できる初期段階の細胞(幹細胞)をつくりだすことに成功したのです。
その細胞(幹細胞)を使えば、心臓や臓器、骨など、自分の細胞を使って体のあらゆる部分をつくることができると言われています。
世界中で、いろいろな病気の再生医療研究が急ピッチで進められています。日本では、臨床試験を経て安全性と有効性が確かめられ、一部の再生医療が健康保険適用対象となりました。
虚血性心筋症や拡張型心筋症の治療では、足の筋肉細胞から心臓の筋肉である「心筋シート」をつくり、心臓に貼り付けて治療することができるようになりました。
また、目の網膜を再生した網膜色素上皮細胞を網膜に貼り付け、加齢黄斑変性の治療にも成功しました。
また、乳房の再建や肝臓病など、あらゆる分野で再生医療の研究が進められています。
NHKアサイチでは、ちょっとむずかしい「再生医療」の最前線の動きを説明してくれました。
再生医療の最前線
再生医療による研究または、治療を行っている病院です。
●虚血性心不全
手術を実施している病院は、大阪大学心臓血管外科です。「虚血性心不全」の中でも重症の方が対象です。
●拡張型心不全
大阪大学・心臓血管外科。現在は、保険適用を目指して治験中だそうです。
●加齢黄斑変性
理化学研究所がiPS細胞を使っての手術に世界初で成功。実施したのは、神戸市立医療センター中央市民病院です。
●パーキンソン病
京都大学の高橋淳医師。2018年に治験を開始する計画だそうです。
●乳房再建
鳥取大学医学部附属病院形成外科で実施。
脂肪幹細胞の血管を作る作用を利用して、脂肪を患者さんの体に生着させます。次の治験は2016年後半を計画。
●毛髪再生
理化学研究所は、研究者の東京理科大教授 辻孝氏を迎え、2021年以降に臨床計画しているそうです。
●皮膚の再生医療
大阪市 きぬがさクリニック 衣笠哲雄院長が行っています。
自分の真皮繊維芽細胞(コラーゲンを作る細胞)を培養し、注入する事で肌を若返らせる治療です。
その他の研究段階にある再生医療
●臓器再生
東京女子医大 先端生命科学研究所では、シャーレの中での臓器再生の研究をしています。
●肝臓再生
横浜市立大学大学院 臓器再生医学 谷口英樹教授、武部貴則准教授は、肝臓の再生に取り組んでいます。
(情報参照元:NHK「あさイチ」 H28.1.20放送「ぐぐっと身近に!再生医療最前線」)