長年の勤めを終え定年退職し、のんびりとした生活を送っていた67歳の男性の症例です。
妻と行く海外旅行の計画をたてたり、孫と遊んだりと幸せな日々を過ごしていました。
ある日、孫と遊んでいる時、腹部になんともいいようもない痛みが走りました。
もともと腰痛持ちであったことから、また腰痛がでたのか程度に思っていましたが、やがて1日に何回も痛むようになってきました。
それも、ある特定の姿勢をしているときに痛みが走るのです。
そして、男性は耐え切れない腹部の激痛に襲われ、救急車で救命センターへ運ばれました。
ただの腹痛かなと思っていたその症状の裏には実は、意外な病気が潜んでいました。
はたしてその病気はいったどんな病気なんでしょう。洛和会音羽病院 金森真紀先生が、意外な病名の診断に導きます。
特定の姿勢でお腹が痛む その病名は
●詳しい症状
・時々腹が痛い、右横腹が痛む
・前にかがむときに痛む
・持病に腰痛がある。
・痛いときは市販の鎮痛剤を飲んでいる
・お通じは毎日快調
・3日前より孫と遊んでいると右下腹が痛んだ
・以降、翌日も痛くなった
・40日前に体調を崩して入院した経験
・その時はトイレに近くなり駆け込む
・もうもうとして、階段で転んで動けなくなった
・診断は腎盂腎炎で1週間の入院で治った
第一診断
・鼠径ヘルニア
→一般に脱腸と呼ばれる。お腹に力が入ったとき痛みが走る。50歳以上の男性によく見られる。
・家族性地中海熱
→発熱とともに腹膜、関節などに痛みがでる。地中海に住む人々に多く見られる
・腎盂腎炎から腸腰筋膿瘍
→ばい菌が腸腰筋にはいると熱、寒気、腰の痛みも説明できる。菌血症を起こして悪寒戦慄が起こる。
OPQRST(痛みの分析)をすると急性で、姿勢で変化する、短時間で繰りかえす、右下腹部の痛み
最終診断・・椎体炎(すいたいえん)
はじめの入院での腎盂腎炎の感染がまだ残っていた。
腸腰筋兆候は足を反らしたときに痛むので、前屈になったときに痛むので、腸腰筋膿瘍ではない。
椎体とは、脊椎を形づくる円柱の骨のこと。この椎体にバイキンが付着し感染を引き起こす病気が化膿性椎体炎です。
感染して変形した椎体が脊髄神経を圧迫し痛みを生じさせていた。
骨には抗生剤が入りにくいため、腎盂腎炎の3週間の治療では細菌が取りきれず再発したと考えられる。
●治療法は
抗生剤の点滴を長期にわたってやる必要がある。
原因不明の患者さんに挑む金森先生。金森先生の元には、病名がわからず症状に苦しむ患者さんが全国から多くやってくるそうです。