49歳のときに若年性認知症を発症して9年間経過したのに、症状はそれほど進行していない方がいます。

青森県に住む前田栄治さん(58歳)。5分前のことが思い出せなくなたり、物事を筋道立てて考えられなくなったのが49歳の時です。

奥さんの美保子さんススメで病院へいきMRI検査をしましたが、異常なしとの診断でした。症状は改善せず、その後、弘前大学で受診。「家族性アルツハイマー病」と診断されたのが50歳の時だったそうです。

認知症

それから9年。通常、発症して10年近く経過すると「一人では何もできない重度」へと進行すると言われる若年性認知症が、わずかしか進行していません。

年単位で進行が進むと言われる若年性認知症が、前田さんの場合、なぜ進行しないのか・・。そこには、重要なポイントが隠されていました。

実は、前田さんは自分が認知症と診断されたとき、職場にいち早く相談し自分ができる勤務シフトに変えてもらいました。

また、ノートを持ち歩き常にメモをして、日常生活に支障がでないように努めるなど、普通に生活できるよう工夫しました。

そんな前田さんに対して、奥さんは、「本人の好きなことをやらせ、できたら褒めてあげ自信を持たせるよう心がける」といったスタンスだったそうです。

「前田さんのような環境があれば、認知症の進行を遅らせることができるのでは・・」、と治療を行っている弘前大学医学部でも注目しているそうです。

NHK認知症キャンペーン「アルツハイマー病 進行をくい止めろ!」では、若年性認知症と診断された前田栄治さんと奥さんの美保子さんをお迎えし、萩本欽一さん壇蜜さんとのトークを交えながら、認知症の予防法を考えました。

進行を遅らせるポイントは社会参加

通常、若年性アルツハイマーの場合、5年で重症化すると言われていますが、前田さんは、今年9年目になるのですが、MRIで調べて見ると脳の萎縮がほとんど進行していません。

前田さんは、鉄道マンで保線の仕事をしていましたが、会社に相談し掃除などの仕事に配置変えしてもらいました。

また、30年来続けている陸上競技のサポートの仕事も仲間に事情を話し、継続参加しながら社会との繋がりを続けています。

前田さんは、フォローしてもらえれば仕事も普通にこなせるため一見すると認知症とは思えません。積極的な社会参加、そのことが前田さんの認知の進行を抑えていると考えられています。

社会参加のポイントは勇気をだして公表すること

社会参加のカギは、公表することだと言います。公表することで周りの人がサポートしてくれるようになります。

ほとんどの人は、認知症を隠そうとしますが、いつかは知られることになります。公表して周りの理解と支援を受けることで、本人も家族も楽になり、社会と接点をもてるようになるといいます。

実は、前田さんは、仲のよい先輩が会社を退社してしまったため職場にいずらくなり、1年前に退社してしまっていました。

しかし、それがきっかけで家に引きこもるようになり、一時的に認知症状が急速に悪化してしまったそうです。

そこで、前田さんは、自ら新たな社会参加の場を見つけます。週に2回ディサービスでのボランティア、そして月2回開かれる認知症カフェのお手伝いです。

現在の前田さんに認知テストを実施したところ、計算能力はまったく衰えておらず、最新の記憶だけ覚えらない状態という、9年前とほぼ同じレベルにとどまっているそうです。

認知症には3つの対策が有効とされています。

【3つ認知症対策】

1.薬
現在、認知症の治療薬には4つの種類があります。早く始めるほど効果が長く継続。海馬の萎縮を遅らせることができます。

2.運動
1周間に3回30分異常うっすら汗がでる程度のウォーキングをすると、認知症を予防できると言われています。

3.生活習慣病
高血圧、糖尿病の治療がアルツハイマー病の進行を遅らせることが知られています。

アメリカでの最新治療の取り組み

アメリカアリゾナ州のコミュニティでは、大学生とアルツハイマー症患者がペアを組み、積極的に会話をすることで、治療効果を上げているそうです。

大学生はペアの患者に積極的に話しかけ、運動訓練などをサポートします。この結果、通常落ちるはずの言語能力が4年経過してもほとんど落ちないという成果をあげています。
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認知機能の進行を遅らせるには、社会生活を関わりあいをもち、家族以外の人との会話のキャッチボールが必要だといいます。

食事や着替えなど日常的な会話だけでなく、現実に直面した興味のある楽しい会話が、認知の進行を抑えるのだそうです。

前田さんの今一番の望みは「認知症を治す治療薬」です。一刻も早く開発して欲しいですね。