今回のNHK総合診断「ドクターG」は、38度以上の熱が1ケ月程下がらず、体がだるく、腰痛と足に痛みがでる患者さんのケースを紹介しました。
順天堂大学医学部総合診療科 内藤俊夫先生が研修医たちを導きます。
患者のこれまでの症状
宅配会社でエリア所長をしている42歳の男性です。体力にも自信があり仕事も順調でしたが、この1ヶ月体調に異変がおこります。
熱が下がらず体もだるく、腰や足が痛くてだんだん歩けなくなってしまったのです。
1ケ月前38.3熱があり、近くのクリニックで薬をもらい一度熱が下がりましたが、20日前にまた熱がでて、抗生物質を処方してもらいました。
また、3週間前ほどから腰のあたりににぶいが痛みがあり、整形外科を受診して、痛み止めと湿布をもらいました。
最近は痛みが背中の方まで拡がり、腰の痛みもどんどんひどくなってきています。
歩いたり自転車に乗っていると、5分位で右足が痛くなってしまいます。ちょっと休むと痛みがなくなり、また歩けるようになります。
昨日、階段で足が思うように上がらず転んでしまい、大事な荷物を壊してしまいました。
おしっこがピンク色になっているのも気になります。
●患者さんのデータ
42歳男性 仕事は宅配配送
170cm 67kg
主訴:熱が出てだるい
●バイタルデータ
・体温 38.5度
・血圧 122/70
・脈拍 112回/分
・呼吸数 20回/分
・尿検査結果 タンパク(1+)潜血(2+)
ファーストカンファレンス
●腸腰筋膿傷
腸腰筋が細菌に感染し、膿傷ができる病気。発熱、腰痛、背部痛み、足の痛みがあります。
発熱が続く、自転車での足の痛み、背中の痛みなどの症状からの診断です。合わない点は、基礎疾患はない、潜血尿、タンパク尿です。
●甲状腺機能亢進症から低下症
甲状腺ホルモンの代謝が全般的に落ちる病気です。だるさ、むくみなどがあります。
筋肉痛、だるさ、動けないなどの症状からの診断です。合わない点は発熱、腰痛などです。
●急速進行性糸球体腎炎
腎臓の糸球体に炎症が起こる病気で、発熱、だるさ、血尿、タンパク尿などの症状があります。膠原病などが原因で発症することもあります。
短期間での発症、発熱、潜血尿、タンパク尿などのからの診断です。合わない点は、足の痛みです。
診断のポイント
プロブレムリストをつくり、整理していく
・熱が1ヶ月続く(不明熱)
・腰痛
・背部痛
・足の痛み
・尿の色
上記の症状を説明できる病気は
・感染性心内膜炎
・感染性大動脈瘤
・腎盂腎炎
・多発筋炎
・化膿性椎体炎
・硬膜外膿瘍
・脊椎カリエス
足の痛みは、神経性のものと血管性のものがあるが、自転車で体を折り曲げていた時も
痛みがあったことから、神経性のものは除外される。
●追加情報
・足の痛みは右側で、間欠性跛行がある
・左足の血圧:124/80、右足の血圧:102/64
・心臓に雑音、腹部に大きな雑音
最終診断
感染性大動脈瘤
腎臓、右足の血管を圧迫するほどの大きな瘤が、大動脈にできていました。心音の雑音は腹部の狭窄部の雑音が聞こえていたためでした。
患者さんの大動脈瘤は、手術により人工血管に置き換えられ、2ヶ月無事に退院しました。