体の調子が悪いときは、本当にツライですよね。

温泉へでも行って、一日ゆっくりすれば回復するのかもしれませんが、小さな子供さんがいる主婦の場合には、そういうわけにもいきません。

体調が良くても悪くてもお構いなしにやってくる、毎日の家事と子供の世話。

親子

やさしくフォローしてくれる旦那さんがいれば、なんとか切り抜けられますが、そうでない場合には最悪ですよね。^^;

ストレスと体調不良が交互にやってきて、精神的に追い詰められ育児ノイローゼになってしまう人も数多くいます。

今回は、地域の家庭医として活躍するドクターGのもとで、時々診療を受けている親子のケースです。

ドクターは往診の帰り、保育園前でお腹が痛いとしゃがみこんでいる女の子と、涙を流しながら女の子を叱っている母親を見つけました。

いつもは温和でやさしい母親なのに・・と、その光景にちょっと違和感を感じたそうです。

話しを聞くと、イライラする、すごく眠い、太ってきた、などの症状が周期的におこっているそうです。

すぐに診察をすすめ、発見されたのは意外な病気で、ドクターのおせっかいのお陰で見事患者は救われました。

地域医療の家庭医として活躍する、自称「おせっかい医」、あさお診療所 西村真紀先生が研修医を導きます。

患者の症状

編集者をしている33歳の女性。タウン誌の編集のチーフ。既婚で4歳の娘一人。

主訴 「とにかく眠くて、イライラする」
・身長 163cm
・体重 50kg
・体温 36.7度
・血圧 115/68
・脈拍 76回/分

心に余裕がなくて、いっぱいいっぱいになってしまい、4歳の娘に当たってしまう。

また朝起きれず、月末の雑誌の締切り近くになると、仕事の失敗の連続でとことん落ち込んでいる。

症状
・夜寝付きはいいけど、朝起きられない。
・夫は協力的だが、イライラして子供に感情的に当たってしまう。

・そんな態度に反省し、落ち込んだり泣いたりすることも度々ある。
・1ケ月半前は元気だった。調子の良い時と悪いときがある。

・毎月25日、雑誌の締め切りがあり、すごく忙しくなる。
・片頭痛があり、市販薬を薬を飲んでいるが最近あまり効かなくなった。

・食欲は、普通に食べている。夜、甘いものを食べてしまうこともある。
・少し便秘気味で最近少し太った感じ。便秘のせいか吹き出ものがでている。

・5年前に煙草はやめた、お酒は家では飲まない。
・最近、朝起きれなくて会議に遅れる、取材に遅れるなどの失敗。

・すごく落ち込んでいるのに仕事中眠くなることもある。
・朝起きれず大事な取材を飛ばしてしまい大問題になったことも・・。

・体の節々が痛い
・具合がいい時と、悪いときが周期的にあるので、怠け者に見られている。

・頭痛薬以外で飲んでいる薬はない。
・感情のコントロールできない。

ファーストカンファレンス

甲状腺機能低下症(3人とも)
甲状腺ホルモンは、生命維持活動を高めるホルモンで、分泌量が減ることにより様々な症状を引き起こします。

主な症状・・体重増加、倦怠感、気分の落ち込み、眠気、便秘、むくみ

患者と合わない点は、多汗、感情が高まる、食欲低下など生命活動のレベル低下がないことなどです。

その他の可能性
パニック障害・更年期障害・月経前症候群・うつ病

うつ病は、命に関わる病気です。死にたいという「希死念慮(きしねんりょ)」が起こるので注意が必要です。

患者さんに直接聞いてみると、「不安だけど死にたいと思うほどではない」とのことでした。

うつ病の可能性があるときの対応
診療所では、入院施設がないため患者を家に帰すことになります。

その場合、うつ病の可能性のある患者に対しては、大切なことが3つあります。

①必ず次の診療日を約束すること
②一人でないことを確認すること(家に誰かいるかどうかを聞く)
③つらくなったらすぐ連絡するように、しっかり伝えておくこと

そうすることで患者さんの命を守ることができます。

セカンドカンファレンス

副腎不全
副腎の機能低下によりステロイドホルモンが減少し、痛みやストレスに対抗する力が弱まってしまう病気です。

筋力低下、関節痛、倦怠感、集中力の低下などが起こります。

くも膜下出血
強い頭痛があり、命に関わる病気なので一応可能性は外せません。

慢性甲状腺膜炎(橋本病)
甲状腺の炎症で甲状腺機能が低下します。

新型うつ病
好きなことなどには症状がでませんが、イヤなことになるとうつ症状がでてしまう非定型うつです。

絞り込み
患者には、症状がよくなったり悪くなったりの寛解増悪があります。このことから、候補の病気を絞り込んでいきます。

良くなった時期と悪くなった時期を、詳細に記述していくと、1ヶ月の周期性があることがわかりました。

症状悪化の周期は、雑誌の締め切り日近くで、生理の周期とも連動していることがわかりました。

最終診断

月経前症候群
排卵前後から月経開始までの間、女性ホルモンの乱れで強いストレスがおこり症状が増悪します。

イライラする一方、気分が落ち込んだり眠くなったりすることもあります。また、便秘、むくみ、乳房痛などが起こりることがあります。月経が始まると症状が回復するのが特徴です。

重い症状には、低用量ピルや漢方などの薬は必要ですが、基本的には薬で治す病気ではありません。月経前症候群は、患者本人が病気を知ることが大事です。

「地域の家庭医は、患者のちょっとした変化をみることができる。大きな病院へ勤務しても、身近に相談できる家庭医マインドをぜひ持ってほしい。」と西村先生よりアドバイスがありました。