胃がムカムカして下からこみ上げるようにして起こる吐き気。誰にでも経験がありますよね。

嘔吐は、胃の中にある食物や異物を吐き出すために起こるもので、命を守るための生体の防御反応の一つです。胃のものは嘔吐により、腸のものは下痢として体外に排出します。

吐き気

生理中や、妊娠中のつわり、飲みすぎによる吐き気、、食べすぎや乗り物に酔ったとき、また、インフレンザや風邪、高熱、食あたり、頭痛、下痢、強度のストレスなどによっても吐き気が起きますよね。

吐き気は、私たちに身近にあり、ほんとうに色々な症状と関係しているんですね。

今回のドクターGでは、「吐き気が止まらない」患者さんのケースです。

コールセンターに勤める42歳の男性は、半年前に妻をガンで亡くし、以来13歳の娘さんと二人暮らしをしています。4日前から吐き気がおさまらずドクターGの病院をたずねてきました。

風邪などの病気でもなく、悪いものを食べてるわけでもなく、とにかく吐き気がひどいようです。これといった原因がないため、吐き気の原因が特定できずに研修医たちも困ってしまいます。

はたして、吐き気の裏に隠された病名はなんなのでしょうか?洛和会丸太町病院上田剛士先生が、研修医を導きます。

患者の症状

●バイタルデータ
体重 36.1度
血圧  126/88
脈拍 97回/分
呼吸数 20回/分

●患者の症状
・10日前に下痢
・4日前から吐き気と嘔吐
・吐き気、嘔吐が収まらず来院
・体の動きが遅い
・反応が鈍い

●吐き気で疑われる病気
・頭
・耳
・心臓、大血管(心筋梗塞)
・肝臓・膵臓・胆のう
・消化器系(胃炎・胃腸炎)
・泌尿器系

●推察された病名
・慢性膵炎
・胆管炎
・ビタミンB12欠乏症
・高カルシウム血症
・副腎不全(低ナトリウム血症)
・糖尿病性ケトアシドーシス

男性の病気は、糖尿病性ケトアシドーシス

男性の病名は、糖分をとりすぎることで起こる「糖尿病性ケトアシドーシス」でした。

男性は、下痢をして食欲がなかったことから、水分とカロリーを取るためと糖分のたくさん入った、コーラーを1日に何本も飲んでいました。

コーラーの多飲により血中の糖分が増え、体内のインスリンが極度に不足し血液中の糖を代謝できなくなり、体がエネルギーを取り込めない状態になっていたのです。

そのため、体は脂肪からエネルギーをとらなくてはならず、その副産物として血液中にケトン体を放出。血液が酸性になり(ケトアシドーシス)、身体に異常がおこっていたのです。

診察により、クスマウル大呼吸(息苦しさ、速くて短い呼吸 吸う:吐く=1:1)、口から甘い匂いのケトン臭、さらに問診により、口渇、多飲、多尿、体重減少、夜間尿があることもわかり、「糖尿病性ケトアシドーシス」と診断されました。

患者は入院しインスリンの治療を受け、2週間後には回復し無事退院していきました。