女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが受けた「予防的乳房切除」は世界中に衝撃を与え、ガンに対する予防医学のあり方を改めて考えさせました。
彼女が受けた遺伝子検査の結果は、「乳がんリスクが87%、卵巣がんリスクが50%」という衝撃の事実でした。その結果は、あくまでも予測に過ぎません。
しかし、同じ遺伝子を持つ彼女の母が56歳で乳がんで亡くなり、今年5月に、叔母が61歳で同じ乳がん亡くなりました。
1975年生れの38歳のアンジェリーナ・ジョリーさんは、6人の子どもと、夫ブラッド・ピットさんのために、乳房の切除を決意したのです。
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人は約2万6000の遺伝子で構成されており、現在その8割の遺伝子の仕組みが解明されているといいます。
遺伝子を調べれば、さまざまな病気の発病リスクがわかるようになりました。
そして、糖尿病、アルツハイマーなどの発病リスクを調べる検査キットが、開発され世界中で販売されています。
病気に遺伝が関連していることを漠然と捉えていた時代から、明確にそのリスクを提示できる時代になり、医療のありかたとともに、その検査結果をどのようにフォローし支え役立てていけばいいのか、様々な角度から考えます。
遺伝子検査の可能性とは
遺伝子検査は、自分の運命をチェックすることができます。
兵庫県の武庫川女子大学では、毎年薬学部の新入生を対象に遺伝子検査を行なってます。検査方法は、容器に唾液を入れて紙に吸わせて提出するだけ。
アルコールの分解能力に関わる遺伝子検査で、A~Eの5段階でお酒の強さを判定し、生徒に渡しています。
アメリカでは、99ドルで120項目に渡る検査を受けることができるそうです。
日本で受けられない検査結果も含まれおり、結果は1ヶ月後、インターネットで知らされます。
俳優の平岳大さんが、この検査を受けてみました。平岳大さんの場合、心房細動のリスクが普通の人の2倍、アルツハイマー病も高いリスクを示していました。
アルツハイマーは、遺伝子的な要素が強くまだ治療法が確立されていないため、結果を知るためには、その状況の理解を求められます。
遺伝子検査と治療
人の遺伝子情報をすべて解析するヒトゲノム計画は、2003年、12年の歳月をかけて完了しました。23種類の染色体の中に4種類の物質ATGCがあり、それによって30億の配列がありました。
この30億の配列が、一人ひとりの個性から病気のリスクまで決めているそうです。遺伝子解析すると、未来におこる自分の現実を、突きつけられることになります。
遺伝子解析は、治療へも活かされています。病気を引き起こしている特定の遺伝子の割り出し、それを治療することで、高い治療効果が得られます。
●肺がんの治療
ALK遺伝子の異常のため発生した肺がん患者に、ALK遺伝子を治療する薬を投薬すると、症状が劇的に改善しました。がんが1ヶ月で半分に縮小し、咳も止まりました。
●難病治療
食べ物を食べると腸に穴があいてしまうという、原因不明の病をもつ子供の全遺伝子を解読した結果、16124箇所に配列の違いを見つけ、病気の原因は、XIAPという遺伝子のGがAになっていることを突き止めました。
そこで、骨髄移植により正常な遺伝子に入れ替えた結果、食べても免疫異常がまったくおこらなくなりました。
●遺伝子と才能
遺伝子を調べることで、運動、持久力、リズム感などの能力がわかるようになってきました。中国では、子供の才能を伸ばすため、遺伝子検査が積極的に利用されています。
北京ゲノム研究所では、今、知能指数160以上の人の遺伝子を調べているそうです。
●受精卵の検査
複数の受精卵から最も病気のリスクが低く、能力が高い受精卵で妊娠したい・・。
そんな望みを実現する検査がアメリカで行われています。500種類の検査項目を35万円で受けることができるそうです。
この検査は、受精卵の段階で命の選別が行われることを意味します。世界から依頼が殺到しており、日本からも依頼が増えているそうです。
人類は多様であるからタフであり、エイズや細菌に対して、多様であるからこそ、人類は生き残ってきました。
人生を楽しむのは、実は優秀な遺伝子ではなく、家族であったり友人であったり、価値観であったりします。
遺伝子解明の結果、今後人類は、どのように進化していくんでしょうか・・一抹の不安が残ります。