足が痛くなると辛いですよね。とたんに日常生活に支障がでてしまいます。

私は、ひざと足の裏の筋を痛めたことがあり、大変な思いをしました。

1年ほどかけて痛みは治まったのですが、今でもちょっと無理をすると、すぐに痛みがでてしまいます。

股間の痛み

今回のドクターGのテーマは「足の付け根が痛む」です。

患者は、IT企業に勤める40代の既婚女性。コンピュータープログラム開発のプロジェクトリーダーとして、現場の第一線で活躍しています。

子供が欲しいのですが、妊活できないほど仕事が忙しいようです。

ある日、突然右足の付け根が痛みだし、耐え切れないほど痛くなりドクターGの病院で診察を受けました。

ITの現場では、ほとんどがデスクワーク。パソコンを前にして1日10時間のひたすらキーボードを叩いて入力しています。

脚を組むクセのある人で、同じように足の付け根が痛くなったという話を聞いたっことがありますが、彼女の場合そんな程度ではなさそうです。

症状は「触ると痛い、座ると痛い・・」、足の付け根には、腫れも見られるようです。

足の付け根が痛む病気としていろいろとありますが、女性の病名はいったい、何なのでしょうか。

神戸医療センター中央市民病院 池田裕美枝先生が病名解明へと導きます。

4か月前より月経のたびに痛くなる

●患者さんのデータ
・38歳女性 会社員
・165㎝ 65㎏
・主訴 足の付け根が痛む

●バイタルデータ
・体温 36.3℃
・血圧 126/72
・脈拍 72回
・呼吸数 20回/分

研修医が最初に下した病名は、卵巣茎捻転、鼠径ヘルニア、希少部位子宮内膜症でした。

卵巣茎捻転は、卵巣に腫瘍などができて大きくなってねじれてしまって痛みを生じる病気です。下腹部に激しい痛みを生じます。ねじれが自然に戻ると痛みもなくなります。

鼠径ヘルニアは、足の付け根のところにじん帯でできた空洞から腸管などが入ってしまい痛みを生じる病気です。男性に多く発症し、痛みや不快感、吐き気などもおこります。自然にへこむと痛みもなくなります。

希少部位子宮内膜症は、月経周期に合わせてできる子宮の内膜が、肺やへそなど子宮以外の場所にできてしまう病気です。妊娠の高齢化などが関係していると考えられています。多くは骨盤の周囲にでき、月経のたびに出血し痛みがでます。

●痛みの出方を整理してみる
4か月前 部屋で座っているときに足の付け根が痛くなる
2か月前 自転車に乗ったときに痛みがでる
10日前 座っているときに痛みがでる
検査当日 立っているときに痛みが弱い
検査昼食後 座っているときに痛み

・痛みがあったりなかったりする(痛みがゼロになることはない)
・足を動かすときに痛い
・触ると痛い
・徐々に痛みが増強している
・4か月前、2か月前の痛みは生理中だった
・生理は重いほう
・性行為では痛みがある

最終診断は希少部位子宮内膜症

痛みのある鼠径部を触診してみました。

・鼠径ヘルニアなら、膨らみ、赤、紫、柔らかい、触ると痛い
・希少部位子宮内膜症なら、塊、圧痛
・鼠径リンパ節炎なら、固め、こりこり
という所見が見られます。

触診の結果は、圧痛があり、硬い腫瘍を蝕知しました。リンパ節の腫れはありません。腹部の触診は、下腹部に圧痛ありました。

女性の最終診断は、希少部位子宮内膜症でした。

痛みは、4か月前より徐々に痛みが強くなり、月経のたびに痛みが増していたようです。

治療は、女性の仕事がひと段落するまでは鎮痛剤と子宮内膜細胞を抑える薬(プロゲスチン製剤)の服用で対応し、仕事は落ちついた段階で鼠径部の希少部位子宮内膜症を外科的な手術で切除しました。