手がしびれる、指先がじんじんする・・そんな症状に悩む人は多いですよね。

しびれには色々な病気が隠れていて、病院へ行こうかなと思っていても、つい様子見で過ぎてしまいますよね。

私の友人も手がしびれて痛い・・と病院へいってみたら、親指の筋肉が痩せておこる「手根管症候群」という病気でした。手根管症候群は、パソコンなどで手首を使う人に多く発症するようです。

今回の患者さんは、手打ちソバ店を営む63歳の男性。ソバ打ち、ソバ切り、水切りなど、職業柄手首はよく使います。

1年前、息子さんが後を継ぎたいとサラリーマンを止めお父さんのもと、お店で修行しています。

はじめて、右手にしびれがでたのは1年ほど前。それから半年が過ぎ、左手もしびれるようになりました。

最近では、ぼんやりすることも多く、会計を間違うこともあるようです。

老化のせいと思ってしましたが、先日はお客さんの前でソバをひっくり返してしまったそうです。

それを見ていた奥さんが心配になり連れてきたようです。ご主人には、どんな病気はが潜んでいたのでしょうか。

高松少年鑑別所 池田正行先生が研修医を導きます。

手のしびれ、やがて足にも波及

●患者さんの追加情報
手がしびれる。頭や体をぶつけたりしたことはありません。

しびれはじめたのは1年前。まず、右手がしびれ始めました。肩こりや、腰痛は以前からありました。

サラリーマンをやめた息子がいて、教えているんですが覚えが悪くストレスになってます。

半年前より、左手もしびれるようになり、疲れやすく、得意の暗算も間違えるようになってしまいました。

酒は飲みますが、健康診断を受けた時、GOT、GPTが高いと言われて、以降、酒の量を減らし休肝日も設けています。その時、肝臓に脂肪がたまっている、胆石もあると言われました。

4ヶ月前、趣味の陶芸をしていたとき、手のひらが痛くその頃から足も痛くなってきました。

半年前より多少便秘気味。頭をうったことはありません。

手のしびれは手のひら、手をぷらぷらするとラクになります。足は足の裏がしびれ、朝方しびれでよく目がさめます。

奥さんからは、「2年前とくらべて肌ががさがさしていて、少し体重が太ったような気がする」「疲れやすく、寒がりになった感じがする」とのコメントがありました。

【患者さんのバイタルデータ】
・体温 35.3℃
・血圧 120/70
・脈拍 57回/分

ファーストカンファレンス

・甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌量が低下し、生命活動が全般的に落ちてしまう全身のだるさ、むくみ、便秘などの症状が現れる。

・橋本病
抗体が甲状腺の細胞を破壊、甲状腺機能低下を引き起こす自己免疫疾患。甲状腺機能低下の8割は、橋本病と言われています。

・アルコール性ニューロパチー(末梢神経障害)
大量の飲酒で神経が障害を受ける。足や手(指)のしびれ、痛み、皮膚の感覚の鈍化。

アルコール性の患者さんは、身なり、言動、態度などの非言語性のメッセージから雰囲気でわかります。

この患者さんの場合、身なりもしっかりし、おしゃれで態度などを見ても、アルコール性のものではないと判断できます。

手足のしびれは、甲状腺機能低下とは別のものでは・・・例えば、腱鞘炎、胸郭出口症候群。

または、橋本病により、体内に水分が溜まってできるむくみなど・・

●検討のポイント
・肝機能が悪いのをどのように説明するか、
甲状腺機能低下→代謝の低下→脂肪肝→肝機能の低下→GOT・GPT上昇で説明ができる。

仮に、甲状腺機能低下症とした場合、肝機能の数値が高すぎるのでは?。
→筋肉の中にもGOTがある。
→甲状腺機能低下症で筋肉からGOTが流出して数値が上がった。
→このように考えれば、肝機能の数値が高いのが説明できる。

・手足のしびれとの関連は、
患者は、手を通る3つの神経の中で、手のひらの親指側の神経である正中神経に問題がある。

これは手根管症候群として説明できる。
→手根管症候群は、むくみ、脂肪などの沈着により手根管を通る。正中神経が圧迫され手のひら、指にしびれ、痛みが起こる。

手をふるとラクになる、動かすとむくみが改善、朝方に痛みが強いことから、手根管症候群だと判断できる。足のしびれは、同様の原因で足根管症候群で説明できる。

最終診断・・橋本病

甲状腺機能低下症(橋本病)手根管症候群。その後血液検査で、橋本病と診断確定されました。

●治療
甲状腺ホルモンを薬で投与することにより、患者さんの様態は改善しました。