「体がだるくて微熱が続く・・」そんな経験、だれもがあると思います。
熱をはかると37.0℃前後で寝込むほどでもないし、風邪ともちょっと違う感じです。
実は、私もそんな経験があります。はじめは風邪かな・・と思って風邪薬を飲んでいましたが、いっこうに治らず。
病院で検査したところ、白血球が9000近くあり、どこかで炎症が起こっていると言われました。
診断結果は、大腸に憩室という袋ができていて、そこが炎症を起こすという「大腸憩室炎」でした。入院して、絶食、点滴治療を受けました。
熱があってダルいときは、必ず何ならの異常がありますので、そのような症状がよく起こる方は一度しっかり診てもらってくださいね。
62歳女性熱あってダルく吐き気、尿には菌が・・
9月6日NHK放送の「ドクターG」では、『熱があってだるい』という62歳の女性の症例が取り上げられました。
毎日、元気いっぱい、めったに店を休んだことのない駄菓子屋のおばちゃんです。
1週間ほど前から熱がでて体がだるく、多少吐き気もあったようです。頑張って店番をしていましたが、高熱がでて、ついにダウンしてしまいます。
病院へ行き検査を受けたところ、尿から菌が検出されました。
尿路感染症、腎盂腎炎、膀胱炎などが疑われる症例です。しかし、ドクターGは、まったく別の病気を疑い検査を進めました。
さて、その病気とは、いったい何だったのでしょうか。
ドクターGは、総合病院国保旭中央病院塩尻俊明先生、研修医らが診断に挑みます。
患者さんの症状
62歳女性 営業(駄菓子屋店)150㎝ 45㎏
主訴 熱があってだるい
●経過
・1週間前 37.3℃ 吐き気あり
・来日前日 38.2℃ おう吐あり
・来院当日 37.8℃
・検査の結果
尿にグラム陰性桿菌 だるさ 寒気なし 腹部、胸部の痛みなし 頻尿、排尿時痛みなし 呼吸音、心音 異常なし
血圧 114/80
脈拍 81回/分
呼吸数/16回
研修医の診断
研修医の診断では、だるさ、発熱、吐き気、おう吐、食欲不振から、コルチゾールが不足しておこる副腎不全が指摘されました。
尿の菌に対しては、50歳以上の女性の20人に1人にみられる、無症候性細菌尿で治療の必要性のないものとされました。
しかし緊急性を考えると、全身に菌がまわって命に係わる腎盂腎炎の診断はさけては通れません。
腎盂腎炎なら2、3日で重症化しますが、患者は1週間前よりの症状なので排除されました。
患者の診断を続けていると、すり足をしていることに気が付きました。
すり足は、水頭症の特徴的な症状です。水頭症の原因として粟粒性結核が疑われました。
しかし水頭症の他の症状である、認知障害、尿失禁などは該当しません。
同様のすり足をする病気として、神経伝達物質ドーパミンが低下しておこるパーキンソン病があります。
パーキンソン病の検査として、姿勢反射障害をしたところ、正常に機能していました。また、横になったときに、膝が曲がっていたことからパーキンソン病も排除されます。
再びピックアップされたのは、副腎不全です。副腎不全ではコルチゾールが分泌されないため、筋肉に炎症をおこし膝を伸ばすことができないことがあります。
患者にさらに問診を進めたところ、朝晩で体調が違う日内変化などがあったことから、最終的に「副腎不全」に絞りこまれました。
最後の見極めは、副腎そのものに問題がある原発性か、脳に問題がある続発性かの診断です。
血液検査の結果、コルチゾールとACTH双方が低値だったこと、脳のMRIを行った結果、ACTH単独欠損症による副腎不全であると診断されました。
患者にコルチゾールを投与したところ、数時間後には元気になってすり足も治った患者がいました。
副腎不全の診断は難しく、正しく診断されるまで
1~2人の医師:33%
3~4人の医師:37%
5人以上の医師:30%
がかかわっていると言われています。
副腎不全の診断は、本当に診断が難しいのですね。
塩尻先生は、思い込みは危険、丁寧に問診し直し診断することが大切と指摘しました。