繰り返される下痢や便秘。病院で検査しても異常が見つからない。
その方は、過敏性腸症候群の可能性があります。

成人の20%の人がかかっているといわれる、このやっかいな病気、
日常生活やビジネスに、大きな支障をきたしてしまいます。
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過敏性腸症候群の方の症状は、こんな感じです。
【毎日の下痢で悩む人】
症状~雑巾で絞られるような痛みが突然やってくる
 ・朝起きてトイレ
 ・仕事に出かける前にトイレ
 ・配達途中でトイレ
いつでも下痢の症状に悩まされ、もしもの時のため
替えの下着を持っている方もいます。

【頑固便秘の悩みの人】
症状~便通は月に4~5回。細い便やコロコロの便しかでない
 ・いつも残った感じ
 ・ガスがたまってお腹が張る
 ・便がでないのにトイレ回数が多い
 ・ガスが溜まると食事ができない
毎日お腹がスッキリしない状態でガスでお腹が苦しい状態です。
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島根大学 木下芳一教授の話
下痢と便秘、この2つまったく正反対のようですが
実は同じ病気で、どちらも過敏性腸症候群なんです。

何かの異常が起こって大腸がうまく働かないために、
下痢や便秘の症状を起こしているんです。

●過敏性腸症候群の特徴
 ・しつこく繰り返す
 ・血液・尿・便潜血・エコー・内視鏡などの検査しても異常がない
上記に加え、下痢や便秘を起こす腹痛や腹部の不快感が月に3日以上あり、
3か月以上続く場合、過敏性腸症候群と診断されます。

●過敏性腸症候群の原因
体質、環境、偏った食事、不規則な生活、感染性腸炎、腸内細菌などが
考えられますが、最大の原因は精神的なストレスだといわれています。
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東北大学大学院 福土審教授の話
ストレスは、肉親の死、転職、日常の心配ごと
子供の独立、結婚、家庭や職場でのトラブルなど様々です。
下痢、便秘などの症状そのものが、ストレスになることもあります。

ストレスが起こると大腸の動きがおかしくなります。

普通の下痢は、悪い食物をいち早く体外へだそうとする防衛反応ですが
過敏性腸症候群の下痢は、大腸の運動が早く動きすぎてしまい
水分を吸収されない状態で、そのまま早くでてきてしまいます。

普通の便秘は、収縮がなんらかの原因で弱まってしまうため起こりますが、
過敏性腸症候群の便秘は、大腸の送り出す力は強いが、うまく機能しないため
腸内にとどまってしまい水分がどんどん吸収されてしまいます。

●過敏性腸症候群の治療法
薬による治療は、以下の3つが考えられます。

高分子重合体
腸内で水分を吸収し、下痢をと止める効果があります。
便秘のときには、硬い便と混ざって便を柔らかくします。

消化管運動調節薬
腸の激しい動きを抑えたり、乱れた運きをスムーズにしたりします。
下痢・便秘・腹痛それぞれに応じた薬や、どの症状にも効く薬もあります。

セロトニン3受容体拮抗(きっこう)薬
ストレスを感じたときに分泌され、大腸の運動異常を引き起こす
セロトニンを働きを抑えます。

●食事対策
1日3回、朝食をきっちと食べること。下痢の人も同様です。
とりたい食品
・食物繊維(ガスのたまる人は、とりすぎないほうがよい)
・乳酸菌

控えたい食品
・脂肪の多い食品
・刺激物(カプサイシン・カフェイン・アルコールなど)
・加工食品

パンやうどんより米飯がガスが出にくいそうです。

●漢方による治療
慶應義塾大学 渡辺賢治准教授 の話
漢方では患者の全身状態である「証」極め、それに応じて治療します。
「虚証」は、やせ型で体力がなく少食の人、
「実証」は、筋肉質で体力がありよく食べる人をいいます。

・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
虚証または中間証の人。下痢や便秘に。

・小建中湯(しょうけんちゅうとう)
虚証で特に体力がない人や子ども。下痢や便秘に。

・半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
実証の人。下痢または便秘に。
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いつも下痢や便秘で悩まされている人は、
一度相談してみてはいかがでしょうか。