40歳をこえたあたりから、高血圧や動脈硬化が心配になってきます。生物は血液によって身体の隅々まで酸素と栄養分が送られており、それが滞ると細胞は死んでしまいます。

血流の滞りの原因となるっているのが、動脈硬化です。動脈硬化は、中性脂肪、塩分摂り過ぎ、ストレス、喫煙、運動不足など、色々な要因が重なり進行していきます。動脈硬化がおこると、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高まるため、動脈硬化にならないようしっかり管理する必要があります。

しかし、問題なのはどうやって管理するかということ。動脈硬化は、まったく自覚症状がなく別名「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれています。そのため何らかの症状が起きてから、病院で検査し対応しているのが現状です。

もっと手軽に動脈硬化が測れれば、心臓疾患や脳疾患での死亡が減らせる・・「TBS 夢の扉+」では、それを実現する開発メーカーを紹介しました。

1分で動脈硬化が測れるスーパー血圧計の開発

動脈硬化をチェックする検査方法は、脈流の届く時間差から測る血圧脈波検査(PWV検査)、頸動脈の状態や断面を調べる頚動脈エコー検査、一酸化炭素の放出量で調べるFMD検査などがありますが、いずれも病院内で横になり検査を受けなくてはなりません。

血圧と同じようにもっと手軽に動脈硬化が測れば多くの病気を予防できるはず・・それを実現する技術を開発したのが、東京町田市 志成データムの斎藤之良さん(60)です。

これまでの動脈硬化検査方法はベットに横になり、30分程度の時間が必要でした。しかし、斉藤さんが開発した、スーパー血圧計なら血圧と同じようにカフを巻くだけで1分で動脈硬化が測れるようなります。

このスーパー血圧計の開発のきっかけになったのが、斉藤さんの工学的な発想と知識です。電気回路の発想から人体の血管を考え思いついたそうです。

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斉藤さんの開発したスーパー血圧計は、新しい血管指数であるAPIとAVIを計測します。APIとAVとIは、血管疾患や脳血管の病気を測る新しい血管の指数として注目されています。

血圧計は、上腕に巻いたカフで血管に圧力を加え一時的に血流をとめ、血流が流れ始める圧力と完全に回復したときの圧力を収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)として計測しています。

斎藤さんが注目したのは、カフで締め付けた後の血管の膨らみ方です。柔らかい血管は膨らみが早く回復し血流が多く流れるようになります。血管が硬いと回復が遅く血流が戻るのに時間がかかります。

この差を計分析すると血管の硬さがわかるそうです。しかも、カフで腕の血流を止めた場合の脈波は、心臓付近の中心動脈と一致するそうです。斉藤さんの仮説は、理化学研究所のスーパーコンピュータを使い、正しいことが実証されました。

志成データムで開発された計測器は、脈波指標付電子血圧計「パセーサ」として商品化され、現在血管に関する学会で研究されています。

現在、パセーサを導入している病院は全国40施設です。より正確な判断するにはサンプル数が必要となります。今、斉藤さんは全国の病院を飛び回っています。

血圧を測るように座ったまま簡単に動脈硬化を計測できれば、生活習慣の改善に役立ち、動脈硬化による心臓疾患や脳疾患を防ぐことができます。

「今の血圧計がスーパー血圧計に変わり、今までは血圧だけを測っていたものが、血圧と血管を診るのが常識になる」斉藤さんは、工学の力を医学の新常識に挑み続けています。