新たなガン治療法として、スマートポリマー「抗ガンメッシュ」によるがんの治療剤の研究が進められています。

研究しているのはNIMS(ニムス)、国立研究開発法人物質・材料研究機構 荏原充宏さん(40歳)です。

国立研究開発法人物質・材料研究機構は、ナノという極小サイズの研究を行い、新素材をつくりだす研究をしている国の研究機関です。

スマートポリマーとは、高分子の新素材のことをいいます。

抗がんメッシュ

このスマートポリマーの繊維の中に「磁性ナノ粒子」という酸化鉄の粒子を入れこんで布状にし、がん治療剤として利用するために
開発されたのが「抗ガンメッシュ」です。

抗ガンメッシュのすごいところは、なんと「貼って治すがん治療薬」の可能性を秘めていることです。

つまり、湿布薬のように、貼り付けてがん治療が行えることです。

なぜそれができるかというと、抗ガンメッシュは、がんの2つの弱点を攻めることができるためだそうです。

1つ目の弱点は「がんは熱に弱いこと」、もう一つは「抗がん剤に弱いこと」。この2つを「抗ガンメッシュ」は実現できるのです。

抗ガンメッシュに磁性ナノ粒子を含ませているため、外部から磁力を与える温度が20度も上昇するそうです。

同時に、磁力は抗ガンメッシュを収縮させ、中に含まれている成分を放出することができます。

つまり、その成分に「抗がん剤」を染み込ませておけば、発熱と同時に抗がん剤の放出が始まり、がん周辺の局部にだけ抗がん剤を投与することができます。

肺がんを培養した皿の中に、抗ガンメッシュを入れ磁力をかけたところ、肺がん細胞のほとんどが死滅したそうです。

腕時計型人工透析器の開発

スマートポリマーは、「抗ガンメッシュ」以外も様々な医療分野での応用を目指して開発が進められています。

腕時計型人工透析器もその一つ。荏原さんは、2011年3月東日本大震災の時に、人工透析をしている患者さんが透析が受けられなくなり、659人の透析難民となって別の県に運ばれているのを見て衝撃を受けたそうです。

人工透析を行う患者さんは、週に3回4時間づつ、大がかかりな装置を使って血液から毒素を抜くことが必要となります。

電気や水を使わない小型の人工透析器をスマートポリマーでできないか・・イメージは腕時計型の小さなもの。

荏原さんは、5年の年月をかけ、乾電池で動く20cmほどの筒状の人工透析器の試作品が完成させました。この装置は、毒素であるクレアチニンだけに絞りこんで作った作ったそうです。

動物実験を何度も繰り返した後、次のステップとして患者さんの血液を提供してもらい実験したところ、体内に溜まるクレアチニン1日分の量を6時間の循環で除去することに成功したそうです。

この成功は、小型の人工透析器の可能性を実用化に大きく近づけました。これができれば、透析病院を探すことなく、どこへも行けるようになります。

荏原さんの、貼って治すがん治療薬「抗ガンメッシュ」と小型透析装置の研究の様子は、TBS「夢の扉+」でも紹介されました。

(情報参照先:
・国立研究開発法人物質・材料研究機構 ホームページ:http://www.nims.go.jp/publicity/digital/movie/mov140319.html
・TBS放送「夢の扉+」)