今回の患者さんは、夫婦で弁当屋店を営んでいます。自営業のため調子が悪くても休むことはめったにありません。
風邪っぽい感じがして、調子が悪い日が続いてましたが、つくった弁当を配達するため休むことはできません。
ある日、駐車場で自損事故を起こしてしまいます。現場にかけつけた救急隊は、意識を失ってショック状態の男性を救い出します。
そこで救急隊長が見た状況を病院で報告したところ、ドクターにある病名が浮かびました。
いったい彼の体に何が起こっていたのでしょうか・・八戸市立市民病院 今明秀先生が、研修医たちを導きます。
配達中意識不明の原因は
患者さんの様子
49歳男性、意識を失って交通事故を起こしてしまいます。ショック状態で意識も回復しません。
右の脇腹に打撲痕、シートベルトの圧迫、右足がダッシュボードで裂傷があります。
心臓、肝臓、膀胱には、問題なし。レントゲン、CTも頭部から骨盤まで問題なし。病院に運ばれてから15分後、しばらくすると意識を取り戻しました。
ろれつは確かではないが少し話せるようになってきました。手足も少し動かすことができるようになります。
頭部に出血と打撲痕があります。
事故の様子は、右前部破損、エアバック作動なし、内側からフロントガラスにぶつかった感じ、ブレーキを踏んだ形跡はありませんでした。
事故当日、お客さんとの応対でトラブルがあったり注文数を取り違ったりしてました。
糖尿病のため、血糖値を下げる薬を飲んでいました。当日の朝は、食事をあまりとれてませんでした。
第一診断
大動脈解離
大動脈の内側の膜が裂ける病気で、血流が悪くなり意識障害や死に至ることもあります。
骨盤骨折・・
交通事故でよくみられる外傷で臓器損傷や大量出血が隠れており、命に関わることもあります。
【意識レベルをはかるGCS判定】
開眼 言葉 運動の3項目で意識障害を判定します。満点は15点で点数が低いほど意識障害は重症です。
現場では3点、救急室に運ばれたとき4点、15分後には12点に回復していました。
【ノーブレーキでの交通事故で疑うことは・・】
①失神、②痙攣 ③睡眠 ④低血糖 ⑤酒 ⑥自殺
の6つの項目を考えます。
最終診断・・・髄膜炎
髄膜炎(細菌性/ウィルス性)
脳を包む膜が炎症を起こす感染症で、頭痛、発熱、吐き気、首が固くなる症状が現れれ意識障害をおこすこともあります。命に関わる病気なので早い治療が必要です。
事故当日の朝から、頭が痛い、熱がある、体がだるいなど手の震えなど、吐き気と次々と髄膜炎の症状が現れてました。そのため食欲もなく食事があまりとれていませんでした。
そんな状態で、糖尿病の薬により低血糖発作をおこし意識障害をおこし気を失ってしまい、ノーブレーキで追突してしまったのです。