息子さんと小さなフラワーショップを営む63歳の女性。しかし、花屋さんでありながら花粉症で毎年のように悩まされています。
今年の症状は特にひどく、身体がとてもだるくて喉が痛い。息子さんも心配して病院へ行くようにすすめましたが毎年のことと我慢してました。
しかし、あまりの痛さに花粉症ではないのでは・・と夜間の緊急外来を訪ねました。はたして、花粉症の陰に隠れていた病名は?
福井大学医学部 林寛之先生がその病名の解明へ導きます。
喉が痛いのは花粉症じゃなく心臓が原因
●患者さん
63歳女性、主人を亡くし40歳の息子と花屋を営んでいます。風邪気味でだるくて喉が痛い。いつから痛くなったのはよくわからない。花粉症だと思ってたそうです。
去年のくしゃみがひどくて病院へ行くとブタクサとヨモギだと言われました。しかし、体がだるかったり、のどが痛いことはなかったです。
最近は、夜があまり眠れません。店の経営や、独身息子のストレスがあります。
昨晩カラオケに行っ、のどが痛くて帰ってきたら、喉の痛みが消えていました。でも、腰と膝も痛そうです。
朝は痛くなかったのですが、夕方4時頃から痛くなり体調が悪くなり横になってました。
風邪かなと思い、夕方5時ころ市販の風邪薬を飲みました。あまりにもだるいので、夜間の緊急外来に来ました。
第一診断
・急性喉頭蓋炎
喉の奥にある喉頭蓋と言われる蓋が炎症を起こし腫れあがる病気。窒息死することもあります。15%は喉を触った瞬間に息が止まることがあります。
・亜急性甲状腺炎
甲状腺に炎症が起こる病気。風邪のような症状が2~3週間続いたあとに発症します。
それ以外の可能性
・溶連菌感染症
溶連菌がのどで繁殖し保菌者のせきやくしゃみで飛び散り、唾液により感染します。熱が高く、のどの痛み、のどの赤さの症状がでます。
・扁桃周囲膿瘍&咽後膿瘍
扁桃腺の周りや奥に炎症が起きて膿がたまる病気です。激しいのどの痛み、発熱、声が変わるなどの症状がでます。
【患者さん診断の様子】
喉を触診すると痛むが、喉の奥には強い炎症や膿がない。レントゲンとファイバーで見ると喉頭蓋は腫れてない。
血液の異常はなく、心電図は右脚ブロックの傾向。腰や膝の関節も痛むが、膝に水もなく腫れもない。
【息子さんの証言】
・家においてあったシャツが汗びっしょりでした。
・肩も痛がっていたが、肩こりではなかったようです。
最終診断は
・急性心筋梗塞
心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が詰まって心臓の筋肉の細胞が死ぬ病気です。胸の痛み、呼吸困難、冷や汗、放散痛として肩やのどの痛みが起こることもあります、
心電図は右脚ブロックで問題はなかったですが、半年前の心電図と比較してみると、明らかに違う波形で、心筋梗塞と判断されました。
●治療
心臓カテーテルを受けて、患者さんは回復しました。
花粉症?、カラオケのせい?風邪?肩こり?膝、腰?など疑って素人判断していたのに、急性の心筋梗塞とは驚きですね。
皆さんも、くれぐれも自己診断で片付けないようにしてください。