いつも積極的にバリバリと働いていた人が最近、何か様子がおかしくなってきている。
決して起こさないミスを起こしたり、物忘れを頻繁にするようになったり・・・。
本人は気がつかないようだけど、周りの人たちがしっかり気がついていた・・・。
そのようなケースは、身近によく見受けられますよね。今回の61歳の女性市会議員も、まさしくそのケースです。
彼女は、ある日、知り合いのところに陳情を聞きにいったところ、相手の名前がでてこなくなり、身体もだるく力がはいらない様子。
疲れ、老化、認知症・・周囲の人たちも彼女のあまりにも不可解な行動に気づき始めます。
見かねた女性スタッフが、強引に彼女を病院に連れて行きました。
ドクターの診断は、彼女の日常生活の色々な出来事を本人や娘さんからひとつひとつ丁寧に聞くことから始めました。
そこで、判明したのは思わぬ病名でした。
大津ファミリークリニック 谷口洋貴先生が、その病名解明へ研修医たちを導きます。
不可解行動をする女性市議の病名とは
市議会議員として精力的に活動していた 61歳の女性市会議員。
●患者さんの症状
【女性スタッフの話】
足腰の強さと記憶力は抜群だった。
1ヶ月前~食事がおかしくなった。 薄味好みだったのが七味をたっぷりかけるようになる。
2週間前~市役所の会議の場所がわからない 息苦しくなって階段が昇れない。 支援者の顔を忘れてしまう。
1週間前~そのおかしさに周囲の人も気づくようになる。
車から降りるとき崩れるように倒れてしまう、 ちょっと動くと息切れをしてしまい、ついには立てなくなり、強引に病院に連れてきた。
【娘さんの話】
3ヶ月前~症状が現れる。立ちくらみで階段で崩れ落ちる。その頃から急に白髪が増えはじめる。
1ヶ月前~車道にはみ出してクラクションを鳴らされる。息苦しくなり帰宅して玄関でうずくまる。
3日前~大嫌いな納豆が食べたいと言い出す。
実は、10年前に胃がんで胃を全摘出している。
最初の診断
①肝腎症候群
肝硬変の進行に伴い腎機能が急激に低下しておこる。新陳代謝の悪化、意識障害や認知機能の低下が起こる
②脳炎
脳にウィルスや細菌が入り炎症を起こす感染症 発熱、頭痛、嘔吐、神経症状、認知機能の低下が起こる
③脳腫瘍
脳の組織の中に腫瘍ができる病気。 手足のしびれ 運動障害 認知機能の低下が起こる
【認知症ではないという判断の理由】
典型的な認知症は、年単位の変化であって 短期間の変化はない。
また、認知症は、短期記憶より失われていくため 昔からの知り合いは長期記憶なので忘れることはない。
短期間で起こる認知症は、治せる認知症である。
最終診断は・・・ビタミンB12欠乏症
胃を全摘すると、生命活動に必要なものが吸収できなりいろいろな障害が起こる。
胃を全摘出したため胃壁から分泌する内因子なくなりビタミンB12を吸収することができない体になってしまった。
しかし、ビタミンB12は肝臓に大量にストックされておりすぐには症状が現れないが、10年かけて消費してしまったため、
全身にビタミンB12欠乏症の症状が現れた。
ビタミンB12欠乏症の症状とは・・
脚が重い 手がしびれる 体がだるい 白髪が増える 認知症状
吸収障害による貧血症状 舌炎(真っ赤になる)
●治療法
ビタミンB12を注射により定期的に投与し治療した結果、 自分のことや場所はわかるようになり杖を使って 歩けるようになったが、認知症がある程度進行してしまっていため完全な回復はしなかった。
胃がんで胃を摘出された方で、もし同様の気になる症状があれば一刻も早く治療してください。