大事に着ていた洋服、旦那さんから買ってもらった大切な洋服、両親からの形見、他人から見れば古着だけど、自分にとっては大切な宝物の洋服があります。
しかし、いつしか時は過ぎ、ほつれや破け、虫穴やかぎ裂き、タバコなどの焼き穴で着れなくなってしまいます。
そんな洋服を、まるで魔法のように元通りに蘇らせてくれるお店があります。名古屋市にお店をかまえる(有)江見屋かけつぎ専門店 本店です。切り盛りするのは、かけつぎ職人松本孝夫さん。
<NHK プロフェッショナル 仕事の流儀のサイトからお借りしました>
松本さんは、神戸のかけつぎ店に生まれ、高校卒業後名古屋で修行し昭和37年にお店「江見屋かけつぎ専門店」をオープンさせます。現在は、会長となっていますが、まだ現役の職人として現場にたち、12人の社員を指導しています。
かけつぎは、かけはぎともいい、洋服に穴や傷ができたものを修復することをいいます。戦後は全国に数多くのお店がありました。
松本さんは、新しい生地がでると生地をばらし、その織り方を紙に書き写し覚えていきます。ほぐしては描き、自分の手で織ってみる、それを繰り返し100種類以上の織り方が頭に入っているそうです。
そのため洋服の生地をひと目で理解し、まったく同じ織り方で糸を摘むんでいきます。すると穴のあいていた洋服が、何事もなかった状態に魔法のように、あっという間に蘇っていきます。
松本さんのうわさを聞きつけ、全国各地から依頼が殺到しているそうです。現在では、年間1万5千着の量をこなしているそうです。
松本さんの信念は「一針入魂」。「頼られたら引き受けるのは職人の誇り」だと語り、洋服から着物、革製品まで、修復の挑戦を続けています。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、かけつぎ職人・松本孝夫さんを紹介してました。
番組では、亡き母から40年前にもらった修復不可能と思えるほどのカーディガンの修復依頼があり、そのかけつぎ技術は、まさに神業でした。
■松本さんのお店 連絡先
江見屋かけつぎ専門店 本店
〒461-0032 愛知県名古屋市東区出来町1-3-18
TEL 052-935-4624
■かけつぎ料金
かけつぎの加工料金は穴の大きさ、個数、素材、場所によって異なるそうです。正確な価格は、品物を拝見した後だそうです。
目安としては、縦、横のサイズを足して1cmあたり600円をかけた料金だそうです。
例)たて2cm、横2cmの場合、2+2+2+2=8✕600=4800円(税別)
この時期になると、松本さんのお店には、毎日100着以上の服が運び込まれると言います。どれも寒くなる前に仕上げてほしいと言う要望。
松本さんの「かけはぎ」は、「かけつぎ」と言う独自の技法です。衣服にあいた穴を埋めるには、ポケットの中など影響のない部分から糸を取り、その糸で生地と同じ編み方で編んでいきます。
この方法ですと、生地と同じ素材のため、目立つことなく修繕できるそうです。ただし、生地は、織り方だけでも数百種類もあり、どのように編んでいくのかは長年の技術で判断します。松本さんは、毎年2000着以上も修繕すると言います。
修繕費は、傷や穴を見てから決めるそうです。以下のスーツのジャケットの穴は、6,500円位と言っていました。
大きな穴には、「差し込み」と言う縫い目を出さずに縫う技法を使います。息を止めて細かい作業に集中します。
最近では、人工皮革やフリースなど糸の取れない素材も多く、どんな素材にも挑戦してきた松本さんは、今やできない物はないそうです。
嬉しいことに、松本さんの息子さん2人とそのお孫さん2人が「かけつぎ」の後継者として松本さんの技術を受け継いでいます。
松本さんは、「修理は修理、ところがその修理の中に自分の気持ちをいくら込めるか。それが僕の仕事やもん。自分の気持ちがどんだけ入っているかが仕上がりに違ってくると思うよね。」と言っていたのが印象的でした。