日本の夏は、年々気温があがり、35度オーバーは、もはや当たり前のようになってしまいました。

私たちの子供だった1960年代頃の夏は今から比べると本当に涼しかったですよね。クーラーなんか、もちろんない時代でし、電車も車も窓全開で走ってましたよね。

厳しい暑さがが終わって、秋になってくると夏の疲れがどっとでて、体調を崩す人も多いですよね。今回の患者さん、電器店に務める35歳の男性も、はじめは夏バテかなと思っていたようです。

症状は、身体がだるく微熱が続いていました。時折、目もかすむこともあります。

症状は、いっこうに治らずどんどん悪化するばかり。視力の低下に加えめまいもするようになり、仕事にも支障がでるようになってしまいました。

どうやら、誰もが経験するような夏バテや夏カゼとは、ちょっと様子が違うようです。

「こういうのは、色々な病気に化けるわけです・・」というドクターGこと 青木眞医師の言葉に、研修医も大苦戦。はたして、研修医たちの下した病名は・・。

視力低下と微熱夏バテが治らない35歳の男性の診断は

●主訴 夏バテが治らない

夏バテしたみたいで、ずっとだるさが抜けない。町の電気店を経営している義理の父の元で、働いています。

だるさは2週間前からです。エアコンの修理がかなさっている時期で、疲れが溜まってたみたいで咳がでてきました。

食欲があまりありませんが、下痢や便秘、腹痛はありません。

熱は37℃位の熱がでたことが、何度かあります。来院10日前くらいから、さらにだるくなりました。

ビタミンCや、辛いものを食べると辛いです。最近、視力が落ちたなって感じがして、作業中クラクラしてしまいました。

めまいではなく、眩しく目が開けれない感じで、遠くがぼやけて、特に右目が見えずらい感じでした。

昨日は、両目が見えづらくなって、お客さんの顔を間違えてしまいました。

●バイタルデータ
体温 37.4℃
血圧 145/80
脈拍 85回/分
呼吸数 14回/分

ファーストカンファレンス

・過敏性肺臓炎
特定の物資を繰り返し吸い込むことで起きるアレルギー反応。エアコンの取り付けでカビを吸い込んだ?

・結核
結核菌を病原体とする感染症。せきやくしゃみで空気感染する。症状は、せき、発熱、だるさ。結核は何にでも化ける病気で、膠原病やガンのような症状にも見える。

●目の症状から病名を考えてみる
・多発性硬化症
視神経や脳神経が侵されると視力障害が現れる。特長は、よくなったり悪くなったり波がある。

・サルコイドーシス
主に肺に肉芽腫と呼ばれる病変ができる原因不明の難病。主な症状は、目のかすみ、せき。

●口の異変から考えてみる
・ベーチェット病
全身の様々な場所に炎症がおきる原因不明の難病主な症状は、視力障害、口内炎、発熱、関節痛、皮膚症状など

●患者の問診と検査
問診
・最近海外に行ったことはない、手足の関節は痛くない
・口内炎ができている
・奥さん以外の人との性交渉はない
・1ケ月前にも倒れたことがある。熱がでて近くのクリニックで
薬をもらい3日程度でラクになる

・ベーチェットを疑い、針反応ををみたが反応なし。
・目の検査・・前房蓄膿が見られぶどう膜炎(虹彩炎)と確認

・心音・・異常なし
・呼吸音を聞く・・右の肺で異音
・胸部レントゲン・・肺門に異常

・CT・・肺門右側のリンパ節に腫れている

診断でわかったことは、
①ぶどう膜炎 ②乾性胸膜炎 ③右の肺門リンパ節腫脹

●絞りこまれた病気
・ベーチェット病
・サルコイドーシス
・全身性エリテマトーデス(SLE)

これらの中で、ぶどう膜炎、口内炎、胸膜炎、肺門リンパ節腫脹の適合を見てみると、全身性エリテマトーデス(SLE)が全部に当てはまる。

ドクターGからの忠告

最初の診断ででていた、結核を検査をせず見過ごしていることに忠告。結核は命に関わる病気であり、感染症の拡大があるので、まっさきに確かめつぶしておかなくてはいけない病気。

ドクターGは、痰から抗酸菌の検査を実施していた。結果は、1日目 陰性、2日目 陰性、3日目で陽性がでる。

最終診断

結核でした。結核も、ぶどう膜炎、口内炎、胸膜炎、肺門リンパ節腫脹などの症状をおこすことがあります。

患者さんには、結核菌を死滅させる抗結核薬の投与を開始。結核菌が死滅するまで、長期間服用し完治しました。

日本は、毎年2万人の結核患者が発生する中蔓延国で保菌者はその倍がおり、免疫機能の低下などにより発病します。

結核は、Great Imitator(模倣の名人)といわれいろんな病気の症状を模倣します。

今回の場合、症状がほと
んどおなじ免疫系のベーチェット病と診断し、結核患者に免疫を抑制する治療を行っていたら、大変なことになるので、しっかり診断することが大切です。