突然呼吸が思うようにいかず息苦しくなる時がありますよね。私の場合には、夜横になった時たまに起こることがあります。

息苦しさは、呼吸がうまくできない症状で、肺、気管支、心臓、血液、ホルモン、自律神経系などが関係していて、素人には何が原因なのかまったくわかりません。

ただ、呼吸をして酸素を取り込むことは、生命維持の基本中の基本。緊急を要する場合もあるので、注意が必要です。

今回の患者さんは、42歳のバツイチ女性。派遣社員で働きながら小学6年制の娘さんを育てています。

これまで、何度か過呼吸なような症状を起こしていましたが、今回のものは、夜横になっている時、息のできない発作のような苦さに襲われたようです。

心配になって、娘さんに付き添われ、ドクターGを訪ねてきました。

岡山大学 片岡仁美先生が、女性の息苦しさの原因解明へ、研修医たちを導いてくれます。

過呼吸に悩む42歳女性の病気の正体は・・

●患者の症状
夜11時に娘さんに連れられ病院にきました。来院1時間前、横になって娘の宿題を見ていたら、呼吸が苦しく発作のような症状になりました。

4年前 離婚しました。その頃最初の息苦しさがおきました。病院で診察を受けたところ、ストレスによる過呼吸との診断でした。それから半年に1度くらいの割合で発作がおきています。

3ヶ月ほど前から、娘を私立の中学校にあげるため昼と夜の仕事の掛け持ちをはじめました。アルバイトの日は、疲れて早めに横になるのですが、息苦しく眠れないときがあります。

吐き気はありませんが、ご飯があまり食べれなくなりました。

●バイタルデータ
体温 36.5度
血圧 120/74
脈拍 108回
呼吸 26回/分
SpO2 98%

不整脈はでていません。ゼーゼーという音はなく呼吸音は正常です。酸素飽和度は正常です。

P.R.

ファーストカンファレンス

・間質性肺炎
肺胞の壁など間質細胞に炎症が起こる病気。肺胞が固くなったり酸素と二酸化炭素の交換がしにくくなり呼吸困難を引き起こします。50歳以上に多く発症します。

・過換気症候群
突然呼吸が早くなり過呼吸状態になり呼吸困難、手足のしびれなどを引き起こす病気。ストレス 不安が原因となる。10~30代の女性に多く発症。

呼吸音は、間質性肺炎特有の音は聞こえなかった。

●発作の傾向
・労作時呼吸困難
重いものをもった時に苦しくなる。このことから、過換気症候群ではない。

・起座呼吸
横になったとき苦しくなり、体を起こすとラクになる。心不全のよくみられる傾向。

●診察で分かったこと
横になるより座っていたときがラクな様子。

子供の頃の高い熱をよくだしていて、小学校で倒れたことがある。その時、関節が痛くなり、皮膚に変な斑点ができていた。

検診している時、苦しそうになって言葉が変になり、(ろれつが回らない)その時脈を見たら不整脈がでていた。

セカンドカンファレンス

リウマチ熱による心臓の後遺症
・リウマチ性心筋炎
・リウマチ性弁膜症
・感染性性心内膜

心筋炎は何年もたってからの後遺症はでない。発熱や理由のない倦怠感は見られないので、感染性心内膜炎はではないと考える。

話し方がおかしいのは、脳梗塞をおこしていた可能性がある。

心電図をとってみると、リズムが読めない。発作性心房細動がおきていた。

最終診断

リウマチ熱による僧帽弁膜症。リウマチ熱の後遺症が20年以上かけて悪くなり、僧帽弁が硬くなります。(狭窄症と閉鎖不全症がある)

●治療
心臓の僧帽弁膜症の手術により、症状は改善し患者は元気に生活しています。

●ドクターGからのアドバイス
・小さなことの違和感を感じたらけっして手を離さない。
・患者の子供の頃からのストーリーをしっかり聞く。

この患者さんの場合、このまま放置していたら、命の危険もありました。息苦しさを感じている人は、簡単に考えないで病院でしっかり検査を受けてくださいね。