北里大学 冷え性専門外来伊藤剛先生の治療
「生姜は体を温めません」と言い切る医師がいます。それは、北里大学東洋医学総合研究所で日本初の冷え性専門外来※を開設した伊藤剛先生。
※冷え性専門外来の初診は、毎週水曜日午前のみ
冷え性は、色々な要因があるので、一概にこれと言えないそうです。冷えの原因を突き止めて、原因に合わせた治療を行うことで改善すると伊藤先生は言います。
番組で取材した女性26歳は、足の冷えに悩んでいました。
まず、患者さんの体を赤外線温度計ではかります。普段は絶対はからない、足の裏や手のひら、頬、胸、上腹部、下腹部など全身で17か所の温度をはかります。
さらに冷えが深刻の場合は、直腸の温度も測ります。これで、体の深部を計測し、表面の温度と比較します。体内の温度も測る場合は、合計32か所の温度を測定します。
分析の結果、女性26歳は、下半身の皮膚温度が低下していることが判明。彼女の冷えの原因が腰痛だということがわかりました。腰のゆがみが交感神経を圧迫し、下半身の血流を阻害していました。
このように冷えの原因は、人それぞれ。腰痛、ドロドロ血、心機能の低下などで、熱が体の末端まで運ばれず、冷えを引き起こしている場合が多いといいます。
足が冷えているからと言っていくら足を温めてもよくなりません。やはり原因である腰の調子を良くしないと冷えは改善しないと言うことです。
脳の錯覚で冷え性に
伊藤先生の専門は、漢方内科。冷えの原因に合わせて漢方治療を行っています。
彼女には、腰痛や坐骨神経痛の特効薬として使われる「独活寄生湯(どっかつきせいとう)」が処方されました。
また45歳女性の場合は、「冷えのぼせ」に悩んでいました。「冷えのぼせ」とは、下半身は寒いのに顔や頭だけが熱く感じる状態です。
まずは、通常通り、体の様々な部位の温度を測ります。測定の結果、彼女の耳の中の温度が低いことがわかりました。実は、耳の中の温度は、鼓膜の近くを流れる動脈の温度なのだそうです。これで、彼女は脳の温度が低いことが判明しました。
脳に行く血流の温度は、非常に大きな影響を与えるそうです。彼女の場合は、脳が冷えていることで全身が寒いと錯覚している状態。そこで、いくら体を温めても冷えを感じてしまったということです。
彼女の冷えの原因は、熱を作るところに問題があったそうです。実は、やせ形の彼女は、食事量が少なく、筋肉量も少ないため熱を作り出せない状態でした。
運動不足やダイエットなどで、熱を作る機能が低下し、脳まで熱が届かない女性は、結構多いそうです。
彼女がやっていた冷え性対策は、「足湯」と「生姜」を摂ること。しかし、先生は「生姜は体を温めません!」ときっぱり。
生姜は消化機能を良くする働きがあり、温感は出ますが、体を温めるということはないそうです。
生姜が体を温めてくれるのは、生姜を加熱や乾燥させ「ショウガオール」と言う成分が増えた場合のみ。生の生姜は、「ジンゲロール」と言う成分が多く含まれ、熱を体の外に出す働きがあり、かえって冷えてしまうそうです。
では、どのようにしたら、冷えを改善できるのでしょう。そこで、伊藤先生おすすめの「冷え性改善ストレッチ」をご紹介します。
冷え性改善ストレッチ
①まず、足の甲を伸ばしながら指を折り曲げます。
②5秒数えたらパッと手を離します。
一時血流の流れを止め、強制的に血流を良くします。
冷えやむくみに効くツボ「築賓(チクヒン)」を押しても効果があります。「築賓(チクヒン)」は、ふくらはぎ真ん中あたりにあります。
マッサージすると、マッサージした側の足先の温度が上がり10分後には、マッサージをしていない方の足にも熱がいきわたり、両足とも温かくなります。