独居していても、もしもの時には子供達がケアしてくれる、先に放送された「NHKスペシャル 母と息子 3000日の介護記録」は、そんな安心感と、親と子供の強い絆がありましたよね。
しかし、子供や親戚、地域との付き合いもなく、独りで生活している高齢者の認知症が、増えているそうです。
周囲との接触がないため、自分が認知症になっていることさえ気が付かず、症状がどんどん悪化してしまうそうです。
いつの間にか、自分の出身も、積み重ねた人生の記憶もわからなくなり、徘徊を続けたり、ゴミ屋敷に閉じこもって住んでいる人も多いとか・・。
自宅介護を前面的に打ち出し、病院は3ヶ月で追い出される現在の仕組みに独りで住む高齢者は、どう立ち向かっていけばいいのでしょうか。
「何かあれば最後は子供たちに・・・」と思ってみても、認知症になった自分の最後の面倒を自宅で見てくれとは、けっして言いたくないのが私たち親の本音ではないでしょうか。
矛盾に満ちた、国の高齢者対策、機能不足の福祉対策の中、私たちは、どう老いていけばいいのか、番組を通して現実を直視しながらしっかり考えてみたいと思います。
このシリーズきっかけとなり、与えられたものを黙って受け入れるという私たち国民の意識が変わり、ソーシャルメディアの力を借りながら、国の施策や方向に反映されていく・・、
日本も、そんな国になって欲しいですね。
●介護サービスを一切拒否する70代の認知症の女性のケース
認知症を患う70歳の女性は、すべてに拒否的であり、区の職員のアドバイスにも一切応じません。
人と会ったこともすぐに忘れ、被害妄想の傾向もあります。物が片づけられなくなり、認知症の薬も飲み忘れます。
最近は、食事も十分に摂れず栄養状態も悪化しているそうです。
●認知症の妻を夫が支えているケース
一人住まいばかりでなく、夫婦のどちらかが認知症になり、同じように孤立を高めてしまうこともあるそうです。
妻は、自分ではまったく認知症だと気づいていません。施設にも行きたくないし、夫と死ぬまで一緒にいたいといいます。
妻が徘徊するため、買い物以外のときは、ほとんど二人で家にこもっています。夫は、なんとか妻の希望をかなえたいと頑張ってきましたが最近、寝不足から食欲もなくなり体調を崩してしまいました。
自分のほうが、妻より長生きできないかもしれないと涙ながら語ってました。
●後見人制度を利用している認知症の男性
月20万円の年金で生活する70代の男性は投資会社と証券会社に株を勧められ、5000万円が蓄えをすべて失ってしまいました。
そのため、後見人制度を利用し、財産を管理してもらい、月に2回お金を届けてもらっています。
この男性は認知症ですが、会話や歩行など日常生活に支障がないため、要介護1のサービスしか受けられません。
取材中にも、そんな彼の元に株の勧誘の電話がかかってきてました。こんな状態でも、彼は施設に行く決心がつかないそうです。男性は、取材の2週間後心臓発作で倒れ亡くなりました。
認知症を患っても、本人の希望を尊重し自宅での生活を周囲がささえる。それは時には、命にかかわる危険性をはらんでいます。
介護の現場では、この厳しい現実に向かい合って取組んでいます。しかし、増え続ける認知症にたいして支える側の人材は決定的に不足しています。
国は在宅介護を押し進めていますが、そうであるなら制度の見直しや環境整備を急がなくてはならない・・。
でも、はたして、それだけで本当に十分なのか・・同時に、自分自身の覚悟も求められているのかもしれない番組では、そう締めていました。
この現実は、すべて私たち自身のことなのです。しっかり考えておかないといけませんね。