東邦大学医療センター大森病院 大津秀一医師(37歳)は、緩和医療専門医として、これまで末期がん患者など1000人以上の死を看取ってきました。

緩和医療専門医とは、ガンの患者さんの痛みや苦しみを和らげる治療を専門にしている医師で、まだ全国で58人しかいないそうです。

陸前高田の女性から学んだ生きる大切さ

「死」について、できることなら話したくないと考えがちですが、逆に話すことで「生」を輝かせることができるといいます。

終末期になると、皆さん必ず自分の人生を振り返ります。そして自分の生い立ちなどを話すうちに、自分の生きてきた意味を考えるようになるといいます。

先生は、2011年4月に陸前高田で医療支援に従事したいたとき、中年の女性と交わした会話が、今も忘れられないそうです。

「先生は、もし今度大きな地震がきたらどうされますか」と聞かれたとき、「自分のできること、やれることを考えとにかく行動します」と答えました。

すると、その女性は「先生、そんなこと言わずにとにかく逃げてください」と言ったそうです。実は、その女性の娘さんは、市庁舎にいて最後まで人のために働き逃げられず亡くなられたそうです。

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「人助けのために娘は殉じた」と皆さん褒めてくれますけど、そんなことより、「生きて帰ってくることが大切なんだ」と教えてくれたそうです。

意外に、家族に対しては身近であるがゆえに「ありがとう」が言えないのですが、残された人にとっては、普段かけてもらった言葉が、その人のすべてなんです。

だから、身近な人にこそ、普段からちゃんと思いを伝えていくことが大切だといいます。

先生は、1000人の人生から学んだ、生きるための工夫を「いい人生だったと言える10の習慣」としてまとめ出版しました。

その本には、生きているときに本当に大切にしなければならない事が、具体例として書かれているそうです。
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医療技術の発達で、なかなか死ねなくなってきた今、長生きするすることが幸せの定義ではなくなってきました。

私たちの年代になってくると、いつ「死」をつきつけられるかわかりません。

そして、人生の終焉を迎えつつある、私たちの親は「人生の意味」を自身の死を持って教えてくれようとしています。

残り20~30年の人生を、どう生きるか「死」というものを一度しっかり考えておきたいですね。そうすれば、何倍もの輝いた人生を送れるのですから。