臨死体験という言葉は、誰もが一度は聞いたことがあると思います。一度呼吸が止まって、それから蘇生した人たちが語る臨死体験。

その内容は、おおよそ共通していています。

三途の川・・、光に導かれ・・、こっちにきてはダメ・・自分が横たわっているの天井から見えた・・、みんなが話しているのがよく聞こえた・・

そのような現象は、はたして本当なのでしょうか。死の瞬間、人は何を考え、死後は、どうなってしまうのでしょうか。

それをジャーナリズムな視点から科学的に解明しようとしているのが、立花隆さん(74)です。

立花隆さんは、2002年にS字結腸ガンと診断されてから、ガンや生死に関わるテーマを、一貫して追い続けてきました。

そして、今20年ぶりに「臨死体験」の正体に挑もうとしてます。臨死体験に脳が深く関係しているのは事実です。

死の瞬間におこる現象は、脳内現象の一つとする「脳内現象説」と肉体が死んでも魂(意識)は残るという「魂存在説」があるそうです。

今まで本格的に突き詰められることのなかった、魂の存在を最新の脳科学、心理学、哲学を駆使して正体を突き詰めようとしています。

タブーとされてきた魂の問題に、科学的視点から、立花さんとNHKが真正面から挑んでくれました。

臨死体験とは何か、魂は存在し続けるのか

臨死体験は脳がまったく働いてない時に起こり
①体から心が離れ幽体離脱
②神秘体験 光に導かれ美し場所を彷徨う
③幸福な気持ちに満たされる
と共通した感覚を体験します。

臨死体験学会では、色々な臨死体験が報告されているそうです。その中で注目するケースが紹介されてました。

生後1ヶ月で生死をさまよっていた子供が2歳になって、死の縁にいた瞬間を克明に記憶していて話はじめたそうです。

驚くことに、その時の医師や両親の状況や行動は、すべて一致していたそうです。

今回の取材で、立花さんはマサチューセッツ工科大学のノーベル賞学者 利根川進さんを訪ねました。

利根川さんは、フォールスメモリ(ニセの記憶)という研究をしていました。

利根川さんによると、人間の脳は高度に発達し、幾つものイマジネーションを持っているためフォールスメモリ(ニセの記憶)をつくりやすい生き物だそうです。

また、ウィスコンシン大学のジュリオ・トノーニ教授の意識の最前線理論「統合情報理論」が紹介されていました。

トノーニ教授にようると、人間の意識というのは、脳細胞は複雑に絡み合った蜘蛛の巣のようなものでそこで統合されたのが意識なのだそうです。

心とは感覚、感情、行動、記憶などが色々なものが統合されて意識=自我が生まれます。これを統合情報理論といい数式で表すことができるそうです。

この理論によれば、生きている間だけ意識があり、死んでしまうと意識(心)も消えます。この理論が正しければ、動物にも意識があり、機械でも意識を生み出すことができるそうです。

死の瞬間、なぜ満足感に包まれた神秘体験をするのか。それは、脳の辺縁系で起こっているそうです。辺縁系は、爬虫類にもある脳の古い時代のもので睡眠のときも同じように活動しているそうです。

辺縁系は、死の瞬間、白昼夢のような状態にし神経物質を大量に放出し、とても幸せに包まれるような感覚を引き起こすようにプログラムされているそうです。

立花さんも、膀胱がんの再発の手術をして体が動かないとき、神秘体験と同じような感覚を覚えたそうです。

その体験をどう受け止めるかは、その人の問題です。ただ、脳はその最後のプログラクを確実に実行するといいます。

立花さんは、今回の取材で見えてきたことを次のようにまとめてました。

①意識は脳内の膨大な神経細胞の繋がりによって生まれる

②人は死の間際、特別な感情をもち、神秘的な体験をするように脳の仕組みができている

③臨死体験とは、誰もが死の間際に見る可能性がある奇跡的な夢

立花さんは、70歳を境に死に対する考え方が大きく変わったといいます。死を漠然としたものから、より明確なものへと意識するようになったそうです。