10代から20代にかけては、本当に疲れ知らず。寝ないで踊り明かしても、ケロッとしていたあの頃とても信じられませんよね。
30、40、50歳と経験してきた私たちにとって20代から30歳になった時、疲れやすくなったと感じるのはよくわかります。
でも、ビルの清掃サービス会社に務める30歳の女性の場合には、その状態がとてもひどく仕事ばかりか、ご飯さえ食べるのがおっくうになってしまうほど。そして、ついに原因不明の発熱が・・・。
学生時代からスポーツ大好きで、体力は人一倍自身があった彼女にどんな病気が潜んでいたのでしょうか。
香川大学医学部 池田正行先生が,彼女の病気を解明してくれます。
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清掃サービス会社につとめる30歳女性。主任としてバリバリ働いていました。
大学時代は体育会のラクロスで体を鍛えていました。
体力には自信があったはずなのに・・仕事も手がつかなくなるほど疲れやすくなってしまいました。
2ヶ月前から、右腕がだるい感じになり昼休みも、食欲が進まない状態でした。
小まめの睡眠をとって、なんとか仕事乗り切ってました。
1週間前から疲れがよけい辛くなってきました。シェイクを吸い込もうとしたら、吸い込む力がでず吸い込むことができません。
髪を乾かすのがつらい。手足のしびれはあるが痛くはない。熱は37.7℃とちょっと熱があります。
体重は変わらない、便秘や下痢はない、夜はぐっすり眠れます。
首を振ったときに、モノが二重に見えることがありました。それから、口が重くなってしゃべりにくい。のどが狭くなった気がして、つばを飲み込めなくなって苦しいです。
第一診断
・重症筋無力症
3人が同じ診断でした。全身の筋力が低下し疲れやすくなる病気。まぶたが垂れやすくなる。
繰り返し筋肉を使うと症状が悪化する。一日の中で症状が重くなったり、軽くなったりすることがあります。
アセチルコリンとい化学物質が足りなくなる
他の病気の可能性は・・
・多発性筋炎
腕や太もも、首などの筋肉が炎症を起こし筋力が低下する病気。
自己免疫疾患の一つで、筋肉の痛みを伴うことがある。
→痛みがない患者に当てはまらないと除外するのは間違いです。
・強皮症
皮膚、腎臓などの組織が繊維化し機能が低下する病気
手の強い腫れが特徴
・甲状腺機能亢進症
全身の倦怠感、手の震え、下痢、体重減少などが起こる病気
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されておこる病気
・ギラン・バレー症候群
運動神経の障害にうより全身の筋力が低下する病気
脳炎、風邪などの感染症が引き金となることが多い
年齢、性別に関係なく発症する
・フィッシャー症候群
ギラン・バレー症候群と同様に神経に障害が起こる病気
目が動きにくい 物が二重に見える
体がふらついてうまく歩けなる症状がでる
最終診断は
重症筋無力症により誤嚥性肺炎がおきていました。
重症筋無力症は、国の指定する神経難病で、国内の患者数は1万5千人。20~40代の女性に比較的多く発症します。
重症筋無力症に伴う誤嚥性肺炎により発熱していました。呼吸する筋肉が低下し、肺の細菌が排出されにくく、誤嚥性肺炎に。治療が難しくなります。
重症筋無力症の患者さんの場合、外来に歩いてきて目の前で呼吸停止する病気ですので注意が必要です。
●対処法
重症筋無力症は、時間をかけ病気ととりくみことが必要です。患者さんは投薬により症状が軽くなり、1年後仕事に復帰できました。