「安全で効果のあるワクチンで人の命を救いたい」今回の夢の扉は、ウイルス学者 根路銘国昭さん73歳の紹介です。
根路銘さんは、ウイルス学者。彼の研究所には、4000万人が犠牲になったスペイン風邪や最新のインフルエンザなど世界中の約30種類以上のウイルスが冷凍保管されているそうです。
そんな彼が今挑んでいるのは、新型鳥インフルエンザH5N1のワクチン。これを開発しないと、人類は新型インフルエンザに負けてしまうそうです。
しかし問題があります。新型のウイルスが流行した場合、ワクチンを作るには、最低6ヶ月はかかります。これでは、恐るべきスピードで変異を繰り返すウイルスには対抗できません。いかに早く効果があるワクチンを作れるかにかかっています。
現在のインフルエンザワクチンは、鶏卵で作っています。鶏卵1個につき、0.8人~数人分のワクチンしかできません。
その上、新型鳥インフルエンザは、非常に毒性が強すぎて取り扱いは、非常に危険です。そのために、感染防備の必要がありワクチン作りには膨大な時間とコストがかかります。
そこで、ワクチンの製造方法を変え、多くの人類を救いたいと言う根路銘さんの挑戦が始まります。
まず、根路銘さんが眼をつけた国は、インドネシア。インドネシアは新型の鳥インフルエンザが頻繁に発生している国だからです。最近では、インフルエンザの流行で160人が死亡しています。
しかし、インドネシアでは、ワクチンが高価なため、人々に浸透していないのが現状です。
そこで、ワクチンの作る原材料を鶏卵から「蚕」に変え、研究を始めました。蚕は、1匹で卵を300個産みます。しかも、蚕なら小スペースでたくさん育てることができます。
鶏卵1個から作れるワクチンは数人分に対し、蚕1匹で作れるワクチンは、なんと数百人分の可能性があると言います。また、インドネシアには、広大な桑畑があるので、蚕のえさとなる桑が大量に用意できるのもメリットです。
これが成功すれば、インドネシアの人だけでなく、ワクチンを買えない世界中の人の命が救えます。
また、彼の強みは、毒性の強い生のインフルエンザを扱うのではなくその「遺伝子情報」さえあれば、いくらでもワクチンを作れると言うことです。
今までは、生のウイルスを使ってワクチンを作るので、多くの危険を伴ってきましたが、遺伝子情報を操作することで、人間に危険な部分は取り除き、有効な部分は残すと言うことが可能になりました。
遺伝子を組み替えることで、安全なインフルエンザウイルスを作り出し、ワクチン開発に役立てようとしています。この遺伝子技術を使えばウイルスがこの先どんな変異をするのか、予測できる可能性もあります。
根路銘先生が目指すのは、「遺伝子組み換えウイルス×大量に増える蚕」で、早くて安全で確実な効果が望める夢のワクチンです。協力会社は、かつて養蚕で栄えた群馬の企業「IBL免疫生物研究所」。
そこで気になるのが、新型ワクチンの作り方です。
新型ワクチンは、まず、蚕の卵に遺伝子を組み替えた安全なウイルスを注入します。すると生まれて来る蚕には、ワクチンを作るための遺伝子が既に備わっていると言います。
あとは、蚕を選別し、大切に育て、育った蚕が300個の卵を産む。この時点で、幼虫にもワクチンを作るための遺伝子が受け継がれているので、代々子孫にもワクチンを作る機能が受け継がれるという仕組みです。
画期的なのは、蚕が吐き出す糸の中にもインフルエンザに効果のあるワクチン成分が含まれると言うことです。この繭玉ワクチンは、水にとかすだけで、副作用の原因になる不純物のないワクチン成分を取り出すことができます。
根路銘先生が言うには、実用化すれば、たった1個の繭玉から作られるワクチンは、数百人分にもなります。また、この繭玉ワクチンの製造期間は、2ヶ月。今まで6ヶ月かかっていたワクチン製造が4ヶ月も短縮できます。
繭玉ワクチンは、世界中の人の命を救うために、近い未来、現実化しそうです。根路銘国昭先生の夢の扉、見守り応援したいですね。