iPS細胞がノーベル賞を受賞し、誰もがその名前を知るようになりました。最近では、iPS細胞での初めての手術が行われたと聞き、いよいよ医療の現場で実践されるレベルになったようです。

iPS細胞と言う言葉は良く耳にしますが、それが何であるかよくわかっていない人もいるのではないでしょうか。実は、私もその1人です。

そこで、ちょっと調べてみて、とてもわかり易い説明があったのでご紹介します。

細胞とは、成熟するとその細胞でしかありえないと言う性質があります。例えば、皮膚の細胞は成熟すると皮膚でしかありえません。皮膚以外の物にはなれません。

細胞

しかし、遺伝子情報としては、受精卵となんら変わりはなくどんな細胞にもなることが可能です。それなのに、成熟してしまうとその他の細胞にはなれないのです。

そこで、成熟した細胞を初期化することで、他の細胞になることができるようにする技術がiPS細胞技術と言うことです。つまり、細胞が成熟する前に時間を戻すことがその技術なのです。

そのiPS細胞からつくった細胞や組織を患者に移植し、病気やけがで失った機能を回復させる手術は、これから先どんどん行われていくかと思います。

しかし、手術より薬の方がたくさんの人を救うことができますよね。原因や治療法も見つからない難病で苦しんでいる人は、世界中にたくさんいます。

そこで、このiPS細胞を利用した新たな薬を作る流れが注目されています。IPS細胞創薬です。

創薬とは、新たな医薬品が製品となるまでの一連の過程のことです。

現在は、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、アルツハイマーなどの患者さんの細胞をiPS細胞の技術で増殖させ、その増殖させた細胞を使って、色々な実験ができるようになっています。

特に患者人数の少ない難病は、人で試す治験も重い副作用で中止になることも多かったと言います。

iPS細胞の技術を使えば、限りなく作られる細胞を使い、今までなかなかできなかった新薬の研究が可能になるということですね。これで、新薬の開発が急速に進むのではないでしょうか。

クローズアップ現代では、このiPS創薬の最前線を追います。

iPS創薬で医療の開発スピードが変わる

ips細胞は、再生医療ばかりでなく新薬の開発にも大きな期待が寄せられいます。

ips細胞は正常な組織の再生ばかりでなく、病気の症状も再現できます。

病気が再現されるということは、これまでの薬の開発手法を大きく変えることができるようになります。

これまで新薬の開発は、長期間にわたる細胞レベルでの検証、マウスの実験、人での臨床、効果と副作用の確認、承認と長い期間と膨大な費用が必要でした。

しかし、ips細胞を使った創薬では、人の病気そのものを大量に再現し直接検証できるため、薬のつくるスピードが格段にアップすると言われています。

この手法を使って、軟骨が成長しない軟骨無形成症をips細胞で再現し、薬の効果を検証したところ、コレステロールを下げる薬スタチンが有効であることがわかりました。

また、アルツハイマー症の原因となるアミロイドベーターの蓄積を再現したところ、3つのタイプがあることがわかりました。

さらに、患者の遺伝子を調べることで、薬の効く人、効かない人、副作用のでる人など、グループ化できるため、テーラーメイド医療やテーラーメイド創薬の可能性も期待できます。

ips細胞による創薬は、新薬の開発から、薬の概念までこれまでの考え方を大きく変えると期待されています。