「疲れた・・」日常生活の中でいつも聞かれるこの言葉の意味は、とても難しいものだといいます。身体は、「痛み・発熱・疲労」の「三大生体アラーム」により異常を伝えていると言われています。

しかし、痛みや疲労は、発熱のように数値で表せないため診断する方法は、いまだに確立されていません。

人はなぜ疲れるのか、疲れの原因物質は何なのか・・。この超難問に挑んでいるのが、大阪市立大学の渡辺恭良先生です。

大阪市立大学医学部では、日本初の疲れの外来、慢性疲労外来が設けられています。

この外来により、「うつ」と「疲労」を明確にわけて診療することができるようになったと言います。

実は、疲れプロジェクトは、1999年に国家プロジェクトとしてスタートしたそうです。

これまでに費やされた金額は、なんと30億円。しかし、疲れの謎は、世界中の科学者の前に大きく立ちはだかってきました。

そして、渡辺先生のチームは、ついに疲れのメカニズムを解明、今、世界中から注目をあびています。

これまでは、疲労の原因物質は「乳酸」であると言われてきました。しかし、乳酸は、逆に疲労回復のための物質であることがわかったそうです。

では、何が疲労物質なのか・・。その本当の原因は活性酸素であることを突き止めました。

そして疲労回復に効果を発揮する物質は「イミダペプチド」であることを発見しました。イミダペプチドを1日200mg摂取し続けると疲労回復に大きな効果があるそうです。

この「イミダペプチド」は、ある特定の食品の中に大量に存在しています。それは、日本人の大好きな、カジキ、マグロ、カツオなどの回遊魚です。また、鶏の胸肉や豚ロースにも多く含まれています。

マグロの場合は1日80g、鶏の胸肉は1日100g食べると効果的だそうです。

疲労度が体温計と同じように、計れるようになれば・・次に、渡辺先生は、疲労の数値化に着手しました。

それまでは、疲労度を図るにはアンケートが中心。なんとか数値化できなかと、運動負荷、脳と色々と試してみましたがダメでした。

最後に浮かんだのが、自律神経系の数値化でした。交換神経と副交感神経をバランスを測れば数値化できる。

そして、そのバランスを、脈と心電を同時に計測することで、数値化する「疲労・ストレス検診システム」を開発しました。その装置は、疲れの度合いをわずか2分半で計測できます。

それにデータ化した自律神経の機能年齢と組み合わせることで、3段階で疲労度を表示させることができるようになりました。

「疲れをいう概念を、誰にでもわかるように数値化すれば、体の疲労状態もわかり、過労死なども防ぐことができます。」

「男性の場合疲労のピークは40~50代、過労から生じる病気や過労死を、ぜひとも、なんとかしたい」と渡辺先生は語ります。

「自分の道は、自分にしかわからない」先生は、そう信じてさらなる疲労の開発に挑んでいます。