私たちの子供の頃、SFというとロボットと火星人でしたよね。21世紀になると空をロボットが飛び回り、火星人の襲来があり・・40年後の未来に心とときめかせていました。
2004年6月、人間の身体の機能を改善、補助するためのサイボーグロボットHALを開発するためサイバーダイン株式会社が設立されました。作ったのは、筑波大学大学院システム情報工学研究科サイバニクス研究センターセンター長 山海嘉之教授です。
山海さんは、1958年生れですから、まさしくロボット、火星人世代です。小学校の頃からSFの世界が大好きで、小学校5年の時の文集に「将来の夢は人に役立つロボットをつくる」と書いたそうです。
それから、40年後、山海さんはその夢の現実のものとして世に送り出しました。サイバーダインが開発したロボットHALは、人に機械を装備して動かす装着型のロボットです。
脳からの指令として送られるわずかな電気信号「生体電位信号」を皮膚から読み取り、骨格に変わるフレームと筋肉に変わるモータにより下肢を補助し、歩行や立ち上がりをアシストします。
映画エイリアン2で、エイリアンと壮絶な闘いをするパワードスーツと同様の仕組みです。自分の動きたいという脳からの信号をキャッチして動くため、操作を覚えることなく誰でも装着できます。
HALは、医療、介護、福祉、労働など幅広い分野から注目されています。現在は、身体機能の補助と同時に脳の機能を回復する装置として、EU全域で医療の現場ですでに導入されています。
HALは、脊椎や脳疾患により混乱してしまった脳と末梢の神経回路をつなぐことで歩くことができなくなってしまった身体の能力を呼び起こすことができるのです。
脳卒中で歩けなくなってしまった女性は、HALの力を借りることで再び歩くことができるようになりました。サイバーダイン社では、下肢用にとどまらず、腕、全身用、産業用と対応幅を拡げており、世界のロボット分野のトップを走り続けています。
日本ではまだ医療器機としての認定がとれていませんが、福祉機器として利用することが可能です。費用は、両脚タイプで初期導入費用55万円、レンタル費として月15~18万円のようです。(H27年1月現在)
量産化によりコストが下がれば、より多くの人に利用してもらうことができます。高齢化社会を迎え、身体の機能が衰え寝たきりの方が増えている今、HALは夢のロボットとして世界中から注目されています。
奇跡を起こすロボットスーツHAL カンブリア宮殿の内容
HALは患者さんを強制的に動かすロボットではなく、あくまで歩こうとする患者さんをアシストします。その結果、ロボットを使わなくて歩けるようになることを目的としてリハビリ施設で利用されています。
番組で紹介された女性63歳は、2011年7月脳梗塞を起こし、医師の診断では歩行獲得は厳しいと言う診断でした。
女性は、2011年7月17日からHALを装着してトレーニングを開始しました。
トレーニング20日後には、麻痺していた足を上げられるようになり、その次の日には立てるようになり、倒れてから66日後には歩いて退院できました。
女性は、HALが無ければ自分は寝たきりだったと言います。
ではなぜ、HALを装着することで歩けるようになるのでしょう。
HALが動く仕組み
①電極パッドを足につけます
②使う人に合わせてアシストする力を調節します
③脳から「歩け」と言う信号が電極を通ってHALに伝わります
④電極パッドからの指令はコンピューターに送られ、モーターを動かします
HALが動くのではなく、患者さんの脳が歩くことを指令し、HALがそれに従い動くことによって、脳にフィードバックされ、再び意志通りに動けるようになると言う仕組みです。
HALの使用はリハビリ施設で可能です。現在、約160施設が500体をレンタルで導入しています。HALは医療機器として未認証なため現在はリハビリ補助器具扱いです。
脊髄を損傷し手と足に麻痺がある男性は、40回分の回数券を41万円で購入し、リハビリに励んでいます。リハビリを続けている男性は、HALを装着したリハビリの感想をこう述べています。
「自分で動こうとする力をサポートされる感じ」、「電動アシスト自転車に乗った感じに近い」、「1日1日で見たらわずかな変化でしかないが、歩きやすくなったのは間違いない」。
また、HALを装着してリハビリする他の男性は、「自分で動きたいように動けるのはロボットスーツのおかげ」、「ロボットスーツを着けないと頭で思っていても筋肉が動かない」と言います。
パワードスーツを着て、高齢者になってもいつでもショッピングへ出かけられる、そんな時代がもうすぐ来るんですね。