頭痛やお腹の痛みは、よくあることですから、市販薬などを飲んでつい我慢してしまいますよね。でも、それが症状をさらに悪化させてしまうこともあります。

今回の患者さんは、44歳の老舗旅館の若女将。5年前からストレスにより逆流性食道炎を患っているそうです。

客も減り、姑の大女将のイビリに悩まされ、腹痛がおこることも・・。でも、その日の食事中に起こった腹痛はいつもと違っていました。

我慢して午後の接客をしていたところ、痛みがひどくなり救急車を呼ぶ事態になってしまいます。

運ばれた緊急病院でCT検査をしましたが異常が見当たらず、自宅に帰されてしまいます。しかし、お腹の痛みは一向におさまらず、ドクターGの病院に駆込みました。

今回のケースは、番組史上最大の難関で研修医も病名を特定することができず「?」の回答も。

指導するドクターGは、地域医療機能推進機構 徳田安春先生。


研修医たちは、徳田先生のアドバイスで、難解な病名を特定することができるでしょうか。

経験したことのないような激しいお腹の痛み

夜中の3時頃、夫に連れられてきました。右わき腹が痛がっていて、横にもなれない状態でした。痛み止めを処方し、今は痛みが和らいでいます。

●主訴
44歳女性 お腹が痛い

●症状
5年前より胸焼けがあり、近くのクリニックで逆流性食道炎という診断で薬を処方してもらっています。

最初に痛みを感じたのは4日前。夕食を食べている時、なんとなくお腹に違和感がありました。

2日前には、どんどん痛みが強くなり、近くのクリニックへ行ったところ腸の動きが悪いということで、お薬を処方してもらいました。

当日 お腹の痛みがひどくなり、これまで経験したことのないような激しい痛みに襲われました。

我慢できずに救急車を呼びました。搬送された病院でCTで検査を受けましたが、異常がないということで家に帰されてしまいました。

しかし、痛みが収まらずの明け方に、夫に連れられこの病院にきました。

●バイタルデータ
体温 37.4℃
血圧 127/81
脈拍 76回/分
呼吸数 16回/分

ファーストカンファレンス

・急性膵すい炎
アルコール多飲や胆石などが下忍ですい臓に急性の炎症が起こる病気。上腹部の痛み、吐き気、発熱がある。

・大動脈解離
大動脈の内側の膜が裂け全身への血流が阻害される。胸、背中、腰の激しい痛み、手足のしびれなどの症状。

・フィッツ・ヒュー・カーティス症候群
女性器からクラミジアなどが侵入し肝臓を含む膜に炎症が起こる病気。腹部中心から右上に強い痛み。

●患者のアラームサインを確認してみる
①人生最大の痛み つまり10/10
②増悪している どんどんひどくなっている
③拡大する痛み

●急性腹症であるかのチェック
この3つから考えることは「急性腹症」である。急性腹症の場合、緊急手術するかどうかの判断が必要となる。

①数分以内に手術・・腹部大動脈瘤破裂、臓器損傷
②数時間以内に手術・・虫垂炎、絞扼性イレウス、卵巣茎捻転、
絞扼性以外の腸閉塞、急性膵炎
③必要に応じて手術(数日)・・アレルギー性紫斑病、心筋梗塞
④お腹の中以外に原因
⑤経過観察 原因不明

●検査データ
・CT画像 異常なし

・レントゲン 異常なし

・心電図 異常なし

・胃カメラ ストレス性胃潰瘍なし

・血液検査 ほとんど異常なし

●追加された患者の情報
8日前 なじみのお客の子供が熱をだしていたので世話をした。
7日前 熱っぽく、頭痛とだるさ、少し喉の痛みがあった。
3日前 腹痛がひどく、前かがみの姿勢になっていた
検査入院中 横に寝れない、腕をあげたとき痛い

最終診断

流行性筋痛症(ウィルス性筋痛症)。子供の夏風邪の原因であるコクサッキーB群ウィルスに感染。体幹の筋肉に痛みが生じる病気。

軽度から重症まで様々で、10/10の症状にもなりえます。

カーネット徴候が(腹痛の原因が腹壁(筋肉・骨・神経)にあることのチェック)確認されました。

まれに合併症を起こしますが、多くは免疫力で自然に回復します。

●処置
痛み止めを処方しました。1週間ほどで回復し、元気に働いています。