詩人の吉野弘さんが、2014年1月15日に亡くなりました。享年87歳でした。

吉野さんは、山形県酒田市出身で、とっても温かみのある抒情詩を数多く発表されてきた方だそうです。

吉野さんのお名前を知らなくても、「祝婚歌」は結婚式などでよく紹介されてきたので、聞いたことのある方もいらしゃるかと思います。

吉野さんは、「祝婚歌は、民謡みたいなものですから、著作権などはないも同然です。皆さんで自由に使っていただければ・・」とおっしゃっていたそうです。

祝婚歌 作:吉野 弘

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい

立派すぎることは
長持ちしないことだと
気付いているほうがいい

完璧をめざなないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで 疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

立派でありたいとか
正しくありたいとかいう

無理な緊張には
色目を使わず

ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい

健康で風にふかれながら
生きているなつかしさに
ふと胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そして なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても 二人にはわかるのであってほしい
    *    *
本当に、この年になったからこそ、わかることがいっぱいありますよね。

夫婦だけでなく、人は人に対してどのように向かい合い生きていけばいいのかを教えてくれています。

こんな気持ちで、人を愛せれば、いくつになっても、幸せになれますよね。吉野さんの他の詩を、ぜひ読んでみようと思います。