どこにも居場所のない高齢者の現状、NHKスペシャルで放送された「終(つい)の住処(すみか)はどこに 老人漂流社会」は、放送終了後に大きな反響を呼びました。

自宅介護、一人生活、痴呆、足腰の衰え、長寿、年金、介護施設不足、老後資金・・・。

高齢者を取り巻く、様々な現実が襲いかかってきたときその問題に立ち向かうための、居場所も施設も解決策もない現実に唖然とします。

それは、夫婦健在であろうが、子供がいようが、お一人様であろうが問題ではありません。高齢者すべてに関わる問題なのです。

「こうすれば安心して老後生活が送れます」というモデルケースも、正解も示されないまま、国、地方自治、病院、介護施設の論理が優先され体制が組まれていきます。

そこに支えきなくなった家族の論理や苦しみも加えざるを得ないという、悲しい現実があります。

今回、番組では、増え続けている認知症にスポットを当て、東京都板橋にある精神病院を長期取材し、そこから、認知症高齢者の多くの問題を拾い集めています。

私たちの世代は、今まさに両親の問題でその渦中にいます。そして、すぐにそれが自分の問題として我が身の問題となっていきます。

この難解なテーマを、どう受け止めて行く必要のか・・・番組を見ながらしっかり考えてみたいですね。

精神科病院の現実

認知症患者の数は、全国で305万人と言われています。

認知症高齢者が自宅で生活することが難しい場合、受け入れ先となるのが、特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホームがあります。

しかし、定員がいっぱいで受け入れられないというのが現状です。そのため認知症の受け皿として、精神科病院が見ているそうです。

本来、精神科病院は、暴力や暴言などの精神症状に対する治療の場なのですが、東京板橋区の精神科病院 飯沼病院では、認知症の患者が、この10年で3倍に増えているそうです。

飯沼病院の現状

・78歳の男性の場合
団地で一人暮らしをしていて認知症を発症し、近隣住民とトラブルになり精神科病院に辿りつく。

・81歳女性の場合
一般病院から退院時、弟さんが色々な施設を探したがどこも受け入れ先がなく、しかたなく病院にお願いした。

・78歳男性の場合
肝臓がんの入院のあと認知症を発症し、一人で住むことができず病院へ入院。

病院では、患者の入院が6ヶ月を越えると診療報酬が大きく下がりますが、退院させるわけにもいかず、最後まで看取るケースが増えているそうです。

「ここが最後の砦とは言いませんが、一人暮らしができない人がこれからもどんどん増え、だれかが手を出さないと成り立っていかないんです。」と淡々と語る飯沼院長の言葉が心に残りました。