私たちの世代になると、孫の世話を頼まれるのは日常茶飯事になってきますよね。孫との遊びは、とても楽しいのですが、熱などをだされると、右往左往してしまいます。

今回の症例の場合には、腹痛と熱の陰に、大きな病気が隠されていたようです。

患者は、祖父母の家に預けられていた5歳の女児です。ある朝、突然、高熱と腹痛を訴え、もがき出しました。

祖父母は、あわてて病院へ駆込みました。

女児の症状は、耳の鼓膜の内側に水がたまっていて、脱水症状のおそれもあるため入院することになりました。

1時間後、連絡を受けた駆けつけた母親に子供の日常生活について聞き検査をしますが、なかなか病名が特定できません。

今回のドクターGは、新潟大学小児科 齋藤昭彦先生。病名確定に悩む研修医を、病名確定へと導いてくれます。

5歳児の突然の高熱と腹痛

●患者の状況
患者は5歳の女の子。お腹が痛く高熱があります。

右上腹部を押すと痛がり、右のリンパ節が腫れていて、右の鼓膜の内側に水が溜まってました。

母親の話から、慢性的な中耳炎があったようです。

風疹と麻疹のワクチンは接種済みです。

●バイタルデータ
体温 39.3℃
血圧 92/58
脈拍 110回/分
呼吸数 22回/分

●ファーストカンファレンス
・腸重積
腸の一部が同じ腸の中にもぐり込み、つまったり血行障害がおこります。生後4ヶ月から2歳までの子供がなりやすい病気です。

症状~腹痛、嘔吐、血便

・虫垂炎
大腸にある虫垂に炎症が起こる病気。特に子供は症状が進みやすく早期発見が大切。炎症で破れると、腸の中の菌がお腹にひろがり腹膜炎や敗血症をおこします。

症状~腹痛、嘔吐、発熱

・ムンプスウィルス感染症(おたふくかぜ)
急性の発熱とともに唾液をつくる耳下腺などが腫れる病気。おたふく風邪とも呼ばれ飛沫感染などによってうつります。膵炎、髄膜炎難聴などの合併症を引き起こすことがあります。

●患者の主な症状
患者の主な症状は、発熱、腹痛、嘔吐、頚の痛みである。

【ポイント】
小児科の基本的アプローチとしてすべての症状を1つの病気で考えること。

ムンプスウィルス感染症の場合、頸の腫れがひいて1~2週間後に腹痛が起こる。患者の場合、すべての症状が一両日で起きているので、可能性は否定される。

【ポイント】
すべての症状を1つの病気で説明できない場合その後の経過を観察しながら、他の病気が起きている可能性も考える

P.R.

●その他の病気の可能性
・黄色ブドウ球菌による感染性胃腸炎
→祖父が竹で手を切ってした手で、マス料理をした。

・尿路感染症
→腎盂腎炎 子供が便秘で夜尿症であるため。

・アレルギー性紫斑病
→子供の体に湿疹ができてきた。

・猫ひっかき傷
→バルトネラ菌による感染。日本の猫の1割が保有。
肝臓や脾臓に膿の塊ができて腹痛が起こることがある。子供は4日まえに、右手を引っかかれていた。

●検査
・X線検査・・異常なし

・血液検査
・白血球異常、肝臓、胆のう系の検査異常

・尿検査
尿中の白血球が多い

・CT検査
胆のう水腫が見られた

・血液と尿の培養検査を実施(48時間後に判明)

●経過及び処置
とりあえず、脱水症がおこる可能せもあるので入院させ、尿路感染症に効く抗菌薬を点滴で投与し経過をみる。

症状が改善すれば尿路感染症の可能性が高い。症状が改善しなければ他の病気の可能性が高い。

経過観察中、体全体に赤斑がでてくる。女児の発疹は紅斑である。

・来院72時間後
川崎病特有の症状が現れる。

最終診断は・・川崎病

川崎病は、川崎博士が発見した全身症の血管炎です。5歳未満の子供に多く発症。心臓の冠動脈にこぶができて、破裂したり心筋梗塞を起こすことがあるので注意が必要。

患者の約10%に胆のう水腫が見られます。

川崎病の主な6つの症状
①5日以上続く高熱
②全身の発疹
③頸のリンパ節の腫れ
④唇や舌が赤くなる
⑤目の充血
⑥手足の先が赤く腫れる

●治療
冠動脈のこぶの発生をおさえる免疫グロブリン製剤などを投与し、川崎病の治療にあたりました。

熱は治療後すぐに下り、入院10日目で退院しました。

番組終わりに川崎病を発見した川崎富作先生(89)から「教科書を学ぶより、患者をよく診ることが大切」とのアドバイスがありました。

川崎先生は、1961年に従来の病名にあてはまらない特徴的な症状をしめす患者2人と出会い、川崎病を発見したそうです。