今、日本人の死因のトップはガンです。日本人の2人1人ががんにかかり、3人に1人がガンで亡くなっています。

しかし、一昔前まで、ガン=死の宣告でしたが、医学の進歩により、早期発見、早期治療すれば高い確率で治せるようになってきました。

ガンの治療には、外科治療、薬物療法(抗がん剤)、放射線治療で行われていますが、外科治療のあと見えないガンを叩くために行われる抗がん剤には、多くの人が苦しめられます。

抗ガン剤は、成長する細胞を徹底的に叩くため、正常な細胞まで傷つけてしまいます。

そのため、骨髄や、消化管の粘膜、生殖器、髪の毛、爪など毎日増殖する細胞が傷めつけられ、激しい副作用に襲われます。

髪の毛は抜け、味覚がなくなり、むくみがおこり、精神的、身体的な苦痛に耐えられず、治療を止めてしまう人もいます。

正常な細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを攻撃できれば、より効果的で苦痛の少ない治療を行うことができます。

その夢の新薬の開発に挑んでいるのが、東京大学先端科学技術研究センター 児玉龍彦先生です。

児玉先生は、世界で「科学に影響を与えた10人」に選ばれた世界のトップを走る医学博士です。

児玉先生は、副作用のない夢の抗がん剤の開発に、スーパーコンピュータを駆使して、研究を続けています。

人の遺伝子ヒトゲノムの解析により、健康を病気をコントロールしている標的タンパク質の仕組みがわかってきました。

その仕組みをスーパーコンピュータを使ってシュミレーションしながら「ゲノム抗体医薬品」を作ることを目指しています。

開発するには、がん細胞の一部である抗原(タンパク質)と抗体(タンパク質)との相互作用を分子動力学によりシミュレーションし、人工抗体の設計を行いう必要があります。

これまでは、人工抗体の設計には、3、4年かけても実現が難しかったのですが、次世代スーパーコンピュータ「京」により、数ヶ月で設計できるようになったそうです。

人工抗体の医薬品ができれば、ガンの初期治療のみならず、再発、転移した進行性のガンに対しても、より強い効果があり、それでいて副作用の少ない夢の抗がん剤となります。

そうすれば、患者さんの身体的、精神的な負担も大きく減らすことができる、世界が待ち望んでいたガン治療薬となります。

児玉先生は、医学者だけでなく、タンパク質工学、薬学、タンパク質計算科学、生物構造学の専門家をまとめ、本当に治るがん治療薬の開発を目指しています。

先生は、「21世紀、進行性ガンの治療は大きく様変わりする転換点にある」といいます。

人類が待ち望んでいた、ガン特効薬の完成まであと少し・・。一日も早い実現を期待したいと思います。