核家族が当たり前になり、十分な介護体制が確立されないにもかかわらず高齢者が高齢者の面倒をみる、老々介護の世帯がどんどん増えています。

今回の患者さんも、老々介護で頑張っている方でした。

小学校教員を退職した73歳の夫は、脳梗塞で倒れた妻を毎日一生懸命介護していました。

ある日、夫の腰に突然激痛が走ります。

以前もギックリ腰をやったことがあるので、また再発したのかと思い病院を訪ねます。

診察している間にも、また激痛が走り、急遽入院することになりました。

実は、それに合わせるように、夫の身体にはいろいろな症状が起こってました。謎の居眠り、物忘れ、錯乱・・。これは認知症?

腰痛の裏に潜む、本当の病を探ります。

73歳夫の腰に激痛!居眠り、物忘れ、錯乱の病の正体は・・

脳梗塞で倒れた妻を介護する73歳男性にある日突然、腰に激痛が走りました。

腰の激痛は1時間ほど続いて落ちついたので2時間後の5時頃に病院を訪れました。

大動脈の病気も疑われたので、エコー検査をすぐに実施しましたが異常はありませんでした。

男性は、これまで大きな病気の経験も持病もないほど元気でした。しかし、最近は町内会の掃除をしているときも、すぐに腰が痛くなって参加するのも辛くなってきていました。

また、最近は、趣味の篠笛がうまく吹けなくなったり、訪ねてきた昔の教え子が思い出せないなどが気になることがあります。

歳のせいかと自信がなくなくしてました。便通は、最近あまりよくないそうです。

診療中にさらに激痛が襲ったので、入院することにしました。その日の夜中に突然、意味不明の言葉を口走り、記憶が曖昧になります。

尿管結石を起こしており、翌日は、石が排出されました。

最近の傾向として、食欲があまりなく、酒も弱くなりました。夜は何度もトイレに行ってますが、体重の減少はありません。

気のせいか、身長が小さくなったような気がします。

【せん妄】・・男性が病院で起こしていた症状
せん妄とは、急に起こる思考の錯乱です。せん妄を起こすと、病気の回復が遅れたり、認知症のきっかけになります。高齢者の入院で25%、集中治療室では70~80%の人が起こします。

●第一診断

パーキンソン症候群
手の震え、足のすくみ、認知症状などの神経症状がでる複数の病気群。振り向くなどの機敏な動作がとりにくい。

多発性血管炎
血管の壁が炎症を起こし血流が悪くなる病気
発熱、体重減少、筋肉痛、関節痛などの症状
中高年の男性に多く発症します。

多発性骨髄腫
骨髄の細胞ががん細胞に変化し、腰や背中が痛む病気
脱力感、意識障害、動悸や息切れがでます。50歳以上の男性によくみられます。

その他、腎梗塞、大腸がんの骨転移、腸閉塞が候補にあがってました。また、尿管結石の原因として高カルシウム血症が疑われます。

高カルシウム血症
血液の中のカルシウムのバランスがくずれ高カルシウム血症を起こします。血液中にカルシウムが増えるため、尿管結石が起こります。

●最終診断

副甲状腺機能亢進症でした。

患者さんの、腰痛や夜の筋肉の痛みの原因は尿管結石でした。尿管結石は、激痛の他、軽い筋肉痛程度の痛みのときもあります。

レントゲン診断は、背骨に圧迫骨折を起こしてました。その原因となっているのは、骨粗しょう症です。その結果、高カルシウム血症を起こしてました。

高カルシウム血症の症状は
背部痛、食欲低下、頻尿、物忘れ、無気力などの症状を示します。

●最終診断

副甲状腺機能亢進症
副甲状腺は、のど元に4つある米粒大の臓器で、血中のカルシウム濃度を高めるホルモン(PTH)を出します。

副甲状腺機能亢進症になると、そのホルモンが異常にでてくる病気です。閉経後の女性に多く発症します。

今回は、高カルシウム血症を発症する他の悪性の病気は、体重減少がおこるため、今回の症状にあてはまりません。

●治療
手術で副甲状腺を摘出して、症状は治まりました。

【せん妄を起こさないようにするには】
夜は電気を消して寝る 家族の付き添いが大切で家と同じようにコミュニケーションをとるといいそうです。

【認知機能が落ちている人とのコミュニケーション】
①相手より目線を低くし、目で会話する
②触るときは親指を使わず支える感じで触る(手で会話する)
③体を触るときは、手を滑らせるようにして触れる
といいそうです。