患者さんは33歳の女性。小さいころから剣道をずっと続けてきた女性剣士です体育会系ですから、気力、体力にも自信がありました。

kenshi

いつものように剣道の練習をした後、コーラを1杯飲んだところ、体が急に動かなくなり道場で崩れるように倒れてしまいました。

彼女の仕事は図書館の司書で、体力的にきつい仕事ではありません。

ドクターに聞かれてみれば、微熱がでたり、関節が痛かったり、力が入らず本のページをめくれなかったも思い出しました・・。

漢方医ドクターである JR東京総合病院 津田篤太郎先生が、問診により彼女のある症状に注目、彼女の病名解明へ導きます。

手に力が入らず稽古のあとに倒れる・・

症状が起きたのは半年前から。力が入らないことが時々ありました。

3ヶ月前から、いつもの調子をだせない、体がいうこともきかない。

手に力が入らず、竹刀を落としてしまったり、電話を落としたりしてしまうことがありました。

思い出してみると、コーラーを飲んだあとに力が入らなくなるということもあります。

剣道の練習のあとコーラを飲んだあとに、崩れるように倒れてしまいました。

倒れたときの症状は、力がはいらず、右半身がしびれ、発汗、物が二重に見える、ろれつがまわらないなどの症状でした。

近くの診療所へ運ばれ、点滴をうってもらったら回復しました。

この年まで、病気らしい病気になったことがありません。父親が脳梗塞で倒れました。

最近ニキビができてくる、寒さを感じる、肌があれるなどの症状がよくでてました。

2ヶ月前の頃、よく熱をだしたり肘や関節が痛んでいたので、風邪で関節痛かと思ってました。

彼と食事に行ったとき口内炎ができて痛くて食べれなかったことがありました。

ファーストカンファレンス

・インスリノーマ
膵臓に腫瘍ができインスリンが増え低血糖状態になる稀な病気。震え、冷や汗、意識障害などの症状がでます。

・周期性四肢麻痺
体内の電解質のバランスがくずれ両手両足に脱力が起こる病気。甲状腺ホルモンが過剰に分泌され引き起こされる場合がある。

・多発性硬化症
脳や脊髄などの神経のいろいろなところが侵される病気。良くなったり、悪くなったりの波がある。50代までの成人に多い。感覚障害、筋力低下などの症状があります。

患者は、倒れたとき、「一過性脳虚血発作(TIA)」が起きていた。一過性に脳の血液の流れが悪くなり起こる神経症状で
左脳におこれば右半身に、右脳におこれば左半身に現れます。ほとんどの症状は24時間以内に改善されます。

●一過性脳虚血発作(TIA)が起こる原因
①生まれつきの血管の異常
②遺伝
③心臓の病気
④自己免疫疾患
⑤薬剤性
このどれかが原因として考えられます。

セカンドカンファレンス

・ベーチェット病
全身に炎症がおきる病気。発熱、関節痛、口腔粘膜、皮膚、目、外陰部の炎症

・全身性エリテマトーデス
自己免疫疾患の一つで、関節、腎臓、皮膚の炎症、口内炎など、全身に炎症が起きる自己免疫疾患。

・高安動脈炎
大動脈や頸動脈など太い血管に炎症が起こる自己免疫性の血管炎。だるさ、めまい、疲れやすくなる

自己免疫疾患という共通の診断でした。

最終診断・・ベーチェット病

漢方では「病の応は、体表に現れる」といいます。

色でみる・・紫斑(皮下出血)なのか紅斑(炎症)なのか
圧迫します・・紫斑は消えない、紅斑は消える。
大きさで見る・・丘疹(1cm以下) 結節(1~3cm)腫瘤(3cm以上)

患者は、手首に結節性紅斑ができていたので、全身性エリテマトーデスかベーチェット病。

その最終選定のポイントは痛い口内炎。ベーチェットの場合の口内炎は痛いが、エリテマトーデスの口内炎は無痛性です。

よって、患者さんは、「ベーチェット病」でした。免疫をコントロールする薬による治療で症状が改善しました。