けっこう腸が弱く、ちょっと冷えたり刺激の強いものを食べると、すぐに下痢になってしまう人、意外と多いですよね。私も、その一人です。

特に苦手なのは、夏の電車の冷房。外で汗ばんでいた身体が、一気に冷えてしまいいつもお腹が痛くなってしまいます。

痩せ気味の私にとっては、あの冷風は寒すぎる温度です。いったい、あの温度は、何を基準に設定しているんでしょうね。

今回は、下痢に悩む患者さんの診断です。

ホームセンターの店長代理の58歳の男性は、最近、お腹が痛みだし、下痢と頻尿がひんぱんにおき仕事に支障がでるようになってしまいました。

彼は、10年前に奥さんを亡くし、一人娘の娘さんは大学の寮に入っているため一人暮らしをしてます。

これからの生きがいのために書道教室に通い始めたところ、緊張のためからかおしっこが近くなり、下痢するようになりました。

下痢の回数は日増しに増え、やがて仕事にも影響がでるようになってしまいます。

最近、店長代理に昇進したため、ストレスが原因かと考えてみたのですが、どうも違うような気もします・・。

下痢の症状は日増しに重くなり、ふらふらする状態が続き、心配した娘さんが病院に連れてきました。

はたして、彼の下痢の原因は、なんなのでしょうか。総合病院国保旭中央病院 塩尻俊明先生が研修医を導きます。

下痢と頻尿、腹痛が続きふらつく

9日前から下痢が止まらない状態で、お腹の痛みも続いています。下痢で1日5回以上も、トイレに駆け込むようになりました。

下痢が始まる直前の食事は、大学の娘が家に帰ってきてつくってくれたすき焼きです。

塩辛が大好きで、そのとき娘の分まで食べてしまいました。

1日1箱のタバコを吸っていて、今は口内炎もできています。その食事をした翌朝から、お腹に違和感がでるようになりました。

その日の午後、書道教室に行ったときですがおしっこが何度もしたくなり、90分の講習中に3回いきました。

家に帰ると下痢が始まり、お腹も痛みだしました。お腹の痛みは日に日に強くなり、下痢は、1日6、7回に、おしっこは10回近く行くようになってしまいました。

尿の色は普通で、体はちょっと熱っぽい感じがします。

●基礎データ
・体温 37.0℃
・血圧 163/103
・脈拍 96回/分
・呼吸数 16回/分

ファーストカンファレンス

潰瘍性大腸炎・・大腸の粘膜に炎症が起きただれや潰瘍ができる病気。自己免疫疾患の一つで微熱、腹痛、下痢などの症状があらわれる。

感染性腸炎・・サルモネラなどの細菌やウィルスなどの病原体が腸に感染する病気。嘔吐、腹痛、下痢の症状。

【その他あげられた病名】
SMA血栓閉塞症・・大腸や小腸へ酸素と栄養を送る上腸間膜静脈に血栓などが詰まる病気。急な発症、激しい腹痛、冷や汗、頻脈などのショック症状。

甲状腺機能亢進症・・甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気。発熱、頻脈、発汗、下痢が合わられる。

症状は9日前からなので、長期にわたる潰瘍性大腸炎の可能性は低い。急性胃腸炎(感染症腸炎)は、7日以内に症状が和らぐので可能性は低い。

【患者の追加情報】
腹痛の痛みはズーンとうずくような痛み。排便で痛みは、変わらない。

セカンドカンファレンス

腸腰筋膿瘍・・背骨から足の付根に伸びる腸腰筋に膿瘍ができる病気

大腸がん・・排便後の痛みが改善したり、増悪していないので大腸がんの可能性も低い。

1.症状を整理してみる

2.腹部の臓器ごとに可能性をチェックし消去していく
残ったのは、小腸、神経、尿管、そして血管

最終診断・・腹部大動脈瘤切迫破裂

最終診断は、腹部大動脈瘤切迫破裂です。長年の喫煙や高血圧で通常2cmの腹部大動脈瘤が1.5倍まで膨れ上がり、小腸、神経、尿管を圧迫して、腹痛、下痢、頻尿を引き起こしてました。

患者さんの状態は、破裂寸前でしたが、人工血管への置換術での一命を取り留めて、元気に職場復帰をしています。