どんな悪性の腫瘍でも病気の治療は、早期発見、早期治療が基本です。

しかし、症状がでにくい病気や自覚症状がない場合、発見が遅れ、それが致命傷となってしまうことがあります。

症状のでにくい病気を、手軽な検査で発見できたなら・・・。その夢のような診断を実現するのが「メタボローム解析技術」です。

唾液や血液から病気を発見するメタボローム解析技術

この解析技術を使うと、だ液から癌を発見したり、一滴の血液から肝臓疾患や、うつ病を見つけることができるそうです。

この技術を開発し、実現化に向け推進しているのが、慶應義塾大学の冨田勝先生(55)とその研究グループ。

メタボローム解析技術とは、体の中に存在する代謝物質を解析し、病気の発症による違いを見つけ出すことにより病気を判定するものです。

冨田さんたちの研究グループは、唾液や血液、尿などから、数百種類の代謝物を、一度に分析することに成功しました。

病気ごとに代謝物の種類、濃度が異なります。その違いを判別することで、唾液や血液から、すい臓がん、乳がん、口腔がん、症状の現れない疾患やうつ病などを高い精度で見分けることができるそうです。

口腔がんは80%、乳がんは95%、すい臓がんはなんと99%判別できるそうです。

膨大なデータから病気を導き出し解析

冨田さんは、もともとは工学が専門でコンピューターサイエンスの研究をしていたそうです。

これまでの研究方法は、原因となる物資を仮定しながら一つ一つコツコツと調べていくというやり方なのですが、このやり方ですと、果てしない時間をかけ実験、検証を繰り返すことになります。

しかし、膨大なデータを一気に集め、それを解析できれば、病気の原因物質や、病気の発症によって何が違ってくるのかわかるはず。それが、メタボローム解析技術の考え方です。

2011年、研究チームは、たった1滴の血液から肝臓の病気を判定することに成功しました。

肝臓が正常な人と肝臓がんなど様々な肝臓疾患を抱えた人の血液をメタボローム解析しました。

その結果、肝臓疾患の人だけが、ある代謝物の濃度に違いがあることが分かりました。さらにその濃度の差から、9種類の肝臓疾患をほぼ100%判別することに成功しました。必要なのは、たった1滴の血液だけです。

うつも同じように判別できます。今まで薬は医師が問診で判断して処方していましたが、データーからも判断が可能なので医師によるばらつきがなくなりますね。

冨田さんの研究所のある山形県鶴岡市では、鶴岡市民1万人のデータを集めメタボローム解析し「未来の健康調査」するなど、次世代を見据えた挑戦に乗り出しました。

「絶対にうまくいかない・・」と言われることに挑戦することが自分のエネルギー源になっている、と冨田さんは語ります。

山形県鶴岡市で「高校生バイオサミットin鶴岡」を開催

先生の提案で、2013年山形県鶴岡市で「高校生バイオサミットin鶴岡」が開催されました。このプロジェクトは、高校生がノーベル賞級の研究に挑戦するプロジェクトだそうです。

県内の高校4校を含む、全国から20校の34個人、団体が参加し、研究発表を行いました。

「究極の分析技術で健康長寿社会を実現したい」冨田さんの夢の実現は、すぐそこまできています。

症状が発症する前に病気が発見されれば、ほとんどの病気を完治することができます。

この素晴らしい技術で一日も早く「手遅れと」いう言葉のない世界を実現してほしいですね。