乳がんで乳房を切除しなければならない人にとって、乳房をどうするかは大きな悩みとなります。乳房のない人生など考えられないと、担当医に温存を切望する人も多いといいます。

乳房の一部のみを切除する乳房温存手術がありますが、ガンの性格や大きさによっては不可能な場合があります。

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また、強引な乳房温存手術は、乳房をすべて切除する乳房切除術に比べ再発のリスクが高まってしまいます。

しかし、乳房は女性にとって、命と同じくらい大切なもの。アメリカでは、「乳がんの治療は乳房の再建の完了まで」という考えがあるそうです。

日本では、再建を望む人に、乳房再建術が行われます。

乳房の下に生理食塩水を入れ徐々に膨らませる組織拡張器や、背中やお腹の皮膚と筋肉を切り取ってつくる乳房再建術がありますが、いずれも手術が必要で、女性の大きな負担となっていました。

そこで新たな方法として、注目されているのが横浜市立大市民総合医療センターが行っている乳房再建術です。

この乳房再建術は、失った乳房の部分にブラジャー型のプラスチックカップを装着しカップ内の気圧を下げ皮膚を引っ張り上げます。

引っ張りあげてできた空間の部分に、お腹や太ももから吸引した脂肪を注射器で注入し乳房を作り上げます。

この方法の最大の特徴は、胸の中の血管が活性化し、入れた脂肪の定着率が優れていること、また、メスで切開しないため傷口は2、3ミリだけで乳房再建が行えることにあります。

脂肪注入前の4週間と、注入後の4週間の約2ヶ月間、胸に装置を1日10時間つける必要があるそうですが、手術そのものは数時間で終わり、入院の必要もないそうです。

現在は、臨床研究段階ですが、2年間で80人に実施したところ結果は良好だそうです。

乳がんで乳房切除した女性はたくさんいます。乳房の再建は、女性の精神的な負担を大きく軽減します。

横浜市立大市民総合医療センターには、乳房再建の専門医 佐武利彦先生がいて、日本のトップを走っている病院です。

新たな乳房再建術に期待している人はたくさんいます。ぜひとも、この乳房再建が全国の病院でできるようになってほしいですね。