現代人は、病気になると当たり前のように薬を飲んでいますが、昔の人は、草や木、動物など、自然にあるものを、そのまま薬として使ってきました。

東洋では漢方薬であり、西洋ではハーブとして発達してきました。自然界にあるものを色々なものを試して効果のあるものを薬としてきたのですが、実は、自然界にはまだ手つかずの薬がたくさん眠っているそうです。

海の中

その中でも、海は宝の山と言われています。海には100万種の以上の生物が生息しており、海の中には薬として使えるものが検証されずに沢山あると言われています。

そんな海洋生物の可能性を研究しているのが、神奈川大学理学部 教授上村大輔さん( 69)です。H27年1月11日放送 TBS「夢の扉+」では、肥満治療薬の開発に挑む上村さんの姿を紹介しました。

藍藻で夢の肥満治療薬をつくる 上村大輔さん

今から25年前、上村さんは、名古屋大学で海洋生物を研究している頃、神奈川県三浦沖で見つけた海綿動物の一種「クロイソカイメン」に、ガンと闘う分子を発見しました。

その分子は、強い抗がん作用をもつ「ハリコンドリンB」という成分でした。ハリコンドリンBは、その後日本の製薬会社により、乳がん治療薬として製品化され、現在世界50カ国で承認され使われるようになりました。

上村さんは、次のターゲットとして肥満を抑制する成分の探索を始めました。現代社会は、肥満との闘いだと言われています。平成24年度の厚生労働省の調査によると、日本人男性の29.1%、女性の19.4%が肥満とされています。肥満は、心臓病や脳疾患、糖尿病、高血圧の原因とされており、先進国の大きな問題となっています。

上村さんは、原始の海洋生物である藍藻(らんそう)の中に脂肪を分解する成分が必ずあるはずと考え探してきました。藍藻(らんそう)とは、光合成により酸素を生み出す藍色をした藻で、サンゴや岩にこびりついている藻の一種です。

30億年前より存在する生物で、地球に酸素を生み出したのも藍藻です。上村さんは食物連鎖の末端である藍藻に、以前より着目してきました。色々な場所の海を調査し、沖縄県石垣島吉原海岸で採取した藍藻(らんそう)から、肥満を抑える効果がある成分を発見しました。

発見した成分をマスの脂肪細胞に投与すると、6日間で脂肪細胞がどんどん消えていったのです。このことは、「ヨシノンA」が抗肥満薬として使える可能性の高いことを示し、薬が開発されれば、夢の肥満解消薬ができるということになります。上村さんは、この成分を吉原海岸の名前をとり「ヨシノンA」と名付けました。

しかし、藍藻からヨシノンAを採取できたのはわずか数mg。これでは色々な実験をすることはできません。そこで、上村さんは「ヨシノンA」に近い分子構造を持つものをデータベースから探しだし、その物質で同様の効果があるのかを調べるため、マウスを使った実験を研究機関に委託しました。

実験を委託して5週間後、マウスを使った肥満の実験結果が報告されました。その結果は、実験物質を加えた高脂肪食を食べたマウスは、通常のエサを食べたマウスのグループと体重がほとんど変わりませんでした。さらに脂肪量では、実験物質を食べたマウスのグループが最も低いというデータがでました。これにより、マウスの肥満進行を抑えられることが実証されたのです。

今回の実験結果を専門家に評価してもらったところ、今回の物質は脂肪細胞に直接働くため、大変有望であるとの評価をもらいました。上村さんは、この物質での人への臨床試験を5年後と定めました。

その時、上村さんは74歳。「好奇心がなくなったら、普通の老人になってしまう」「海で囲まれた日本は、自然の宝庫、宝の山」と語り、日本中の海を飛び回っています。海洋生物から新薬を作り出す!」上村さんの挑戦は、まだまだ続きます。