事故や病気になり、119するとわずか5~10分で、救急車が現場に駆けつけてくれます。

救急車に運びこまれ、すぐに病院へ直行してくれると思いきや、救急車の中では受け入れ先の病院探し。

それが決まらないうちは、出発さえできないのです。見切りで発車しても、病院で拒否されタライ回し。それで亡くなる人もでて、医療現場のあり方が問題視されています。

日本の医療現場は、いったいどうなっているんでしょうか・・。

そもそもERとは、Emergency Roomの略で、救急救命室を意味します。365日24時間休まず、ずべての救急患者を受け入れるのがERです。

そんな中、運びこまれた患者は絶対に受け入れ診察する。そのERの基本中の基本を貫いているプロフェッショナルが福井大学付属病院のER専門医・林寛之先生(51歳)です。

林寛之先生は命の前には、謙虚であるべきだと語ります。どんな患者に対しても決して拒まず、その症状や所見から、探偵のように瞬間的に推理しながら病の本質を見極めていきます。

この「見極め」が患者の命を大きく左右します。腹痛でも、裏に隠れる重篤な疾病を見逃せば、すぐ命に関わります。豊富な知識と経験、研ぎ澄まされた洞察力で病気の原因を特定し、専門医に引き継ぎます。

林先生の活躍もあり、福井県は日本で唯一、「たらい回し」ゼロを成し遂げたことがあるそうです。一刻を争う命の現場に密着し、プロのスゴさと医療のあり方を考えます。

林先生は総勢19名の医師を率いています。朝のミーティングは、笑いでみんなの心を解きほぐします。

林先生は、日本ではめずらしいER専門医です。内科、外科にかかわらずあらゆる病気の原因を見極める初期診療のプロフェッショナルです。

緊急の現場で、性格に診断をく出すのは容易ではありません。多くの人は混乱して、自分の症状を正確に伝えられません。

先生は、問診に加え、顔色、目の動き、汗の量、呼吸音、様々の所見から病気を絞り込んでいきます。

自らの職業を、名探偵コナンだといいます。ERでは、患者の初期治療に専念し、高度な手術は専門医にまかせます。このやり方が、たらい回しを回避できるシステムとして注目されています。

日本の緊急医療は、患者の程度により3つに分かれています。3次救急には、それぞれの専門医がいますが、最も数の多い2次、1次の病院には、各専門医が持ち回りで当直しているため、専門外の患者は対応できない断ってしまうのです。

ERはすべての初期診療にあたり、専門医のいる病院と連携できるため、たらい回しを劇的に減らすことができるそうです。

先生が、ERになったのは、自治医大卒業後、外科医として勤務していたとき自分の救えない患者が、あまりにも多く愕然としたからだと言います。

その後、生涯、師を仰ぐ寺崎秀一先生のすすめでカナダ、トロント総合病院のERで働き始めました。

その現場で、ERのすべての考え方、システムを学び、自分の進む道はこれだと思ったそうです。

「突き詰めて、突き詰めて、突き詰める」それが先生のERです。先生は、常に新しい情報を手にいれるため、暇さえあればあらゆる論文に目を通します。

林先生は、今、若いER医師の育成に力をいれています。自分一人で頑張っているよりも、若い医師を育てれば、もっともっとたくさんの患者さんが恩恵を受けられるといいます。

「考えちゃいけない、攻めろ、攻めろ」と若い医師に教えます。先生は、患者さん、その家族の不安を和らげるのも医療だと語ります。

今、先生の元には全国から優秀な若い医師が集まり、日本の医療の将来を担っていこうとしています。